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SAO─戦士達の物語
キャリバー編
百二十九話 おんぶとだっこ
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震えていて、消え入りそうな儚さを含んでいて、同時に、堪えようのない恐怖がにじんでいた。

「……リョウは……居なくなったり、しないよね……?」
「…………」
その問いに、リョウの手が止まった。
本当は、そんな事を聞いてしまう事は、よい事ではないと分かっていた。
それは、リョウを縛りつけようとする言葉だ。誰よりも自由奔走なこの青年を、他人の意思で何処か一カ所に縛り付ける事等、だれも望んではいないし、サチだって嫌だ。

けれど、湧き上がった不安が消えなくて、その不安を消す方法が欲しくて、ついついそんな事を聞いてしまう。
よりどころが欲しいだけの、弱い自分が、表面に湧き出してくる。

「…………」
「…………」
互いに黙りこむ時間が過ぎて……リョウは、不意に、上昇を再開しながら、言った。

「……分かんねぇ」
「…………」
「俺も、人間だからな……この先がどうなるか何て知らねぇし……何時か、もしかしたら、お前の前から消えなきゃならない。そんな時が、来るのかもしれねェ」
「……うん」
分かってはいた。
リョウは、普段は器用なくせに、こういう話になると、何処か器用さに欠ける事が有る。きっと、彼なりによく考えて、自分に真摯に向き合う為に、出してくれた答えなのだろう。
それは、ある意味慰めてもらうよりも、サチにとっては嬉しかった。他人に優しいばかりでは無い、リョウらしい言葉だ。

「…………ただ、よ」
「え……?」
と、不意にリョウの言葉が再開されて、サチは思わず聞き返す。

「……そん時は、ちゃんと、俺もお前も納得できるようにすっから……ま、そん時は、話聞いてくれ」
「……わかった。そうする」
「おう……さて、そんじゃ、出るぞ!」
「え?わ……」
そんな事を話している内に、既に穴の出口は目の前になっていた。

「よっ……と」
「わぷ……」
穴から這い出すと、サチが先ず先にリョウの背中から降りる。続けてリョウが這いだし……仰向けに倒れ込んだ。

「っだぁぁぁぁぁ、疲れた……」
「わ、ご、ごめんね?私のせいで……」
「全くだ。次はもうちょい考えてやれよ」
「はい……」
俯くように座り込むと、リョウはくっくっ。と笑った。

「しかし……氷塊の落下は端っこまではこねぇのな。落下物でダメージ受けねぇようになってんのか……彼奴等どうしたかな……」
「うん、心配だね……」
「まぁ一応アルンの危機は救われたんだろうが……ん?」
「?どうしたの?リョウ……え?」
と、不意に天頂を見て、険しい顔をしたリョウに習って、サチが上を見ると、其処に、非常に嫌な予感のする光景が有った。

世界樹の根の育つスピードが、以上に早まっていた。太い根が凄まじい勢いで天頂から、此方に向けて轟音を立てて迫って来てい
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