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SAO─戦士達の物語
キャリバー編
百二十九話 おんぶとだっこ
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、」
手、と思った時には、リョウの苛立ったような声が響いて居た。

「……何してんだバカ。お前マジで落ちてぇんじゃねぇだろうな?」
「ご、ごめん……」
「……はぁ……ったく、ほれ」
「わ……」
腕一本で宙ぶらりんのまま悲しそうに謝ったサチに溜息を吐くと、リョウはそのままサチの体を片腕でゆっくり持ち上げ、彼の肩のすぐ近くまで持ち上げた。

「や、やっぱり力持ちだね……リョウ」
「別に?お前の場合軽いしな」
「えっ?」
「装備が」
「あぅ……」
少し期待したように顔を上げたサチは、次の一言でまた顔を俯かせて意気消沈する。

「ほれ、沈んでないでさっさと掴まれ」
「うん……」
促され、リョウの首に腕をまわしてサチはリョウにおぶさる形になる。と、途端に先程の妄想が頭に浮かんで、またしても顔が赤くなった。

「さてと……」
そんな彼女の事を露ほどにも気にせず、リョウは片手で冷裂に捕まると、アイテムストレージを操作。中からダガーを二本取り出すと、壁に突き刺す。

「おっし、上るぞ!」
「え、あ、う、うん……」
と、言うが早いがリョウは二本のダガーの柄を掴み、冷裂をストレージに収納すると……

「おりゃりゃりゃりゃ!!」
「わっ!」
サチが予想しているよりも遥かに速いスピードで、壁面をザクザクと登り始めた。
こう言った登り方をする際一番難しいのは自らの自重を引き上げる重さが有るかだが、リアルと違って筋力値が高いほど体重が重くなると言う事の無いこの世界では、それも特に問題にならない。とくに、この男にとっては。

「は、はやいよ……」
「速い方が良いだろ?」
「それはそうだけど……」
少し予想の上を行きすぎて驚いたように言ったサチに、リョウは乗りよく言った。すると、級にそう言えば彼がそう言う人物であった事を思い出して、サチは諦めたように息を吐く。

「…………」
不意に……全身に伝わる温かさが、ヨツンヘイムの寒さを溶かすように、自分に染み込んで来ているのが分かった。
何故か、等言うまでもない。リョウの背中にしがみついているからだ。

「…………っ」
その優しい人間のぬくもりが、サチの中に温かい記憶と悲しい記憶を同時に呼び起こす。
自分と共に笑い合い、今を生きる人々と、自分の前から永久に姿を消した、何人もの友人達の姿が……

「う……」
急激に、背中の寒さが強さを増した気がして、サチは震えた。今しがみついている背中が、唐突に、自分の手の中から消えてしまうような不安が、根拠もないのに胸の奥底からわき上がる。

その寒さと怖さを和らげたくて、サチはより強く涼人の体にしがみつく。

「……ん?どうした?」
「…………ねぇ、リョウ……」
リョウの問いに返された小さなサチの声は、何処か
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