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SAO─戦士達の物語
キャリバー編
百二十九話 おんぶとだっこ
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玉座の後ろ側に回り込むと、この城にポップした中ではアイスドワーフしか通れないだろこれは。と言いたくなるような小さな穴がぽっかりと開いて居た。

躊躇わずに其処に飛び込み、狭い通路を一列で進む。

「って言うか……仮にこのまま城が浮いたとして、スリュムはもういないのに誰がアルヴヘイムに侵攻するんだ?」
「スィアチってのが居るんだよ。鷲に姿変える巨人でな。元々此奴がスリュムヘイムの主で、ついでに言うと世界樹の上にあるっつー黄金のリンゴ狙ってる張本人だ。要は元々スリュムはサブ。本ボスはスィアチってわけだ。当の本人が何処で何してんのか知らねぇけど……」
「クエストです。現在ヨツンヘイムで行われているスロータークエストを依頼しているのが、《大公スィアチ》と言うNPCのようです」
リョウの言葉にユイが即座に付け足した。
しかしまぁ此処まで徹底しているとなると、やはりカーディナルシステムのシナリオの行きつく先は世界樹侵攻とアルン高原占拠で間違いなさそうな感じだ。まぁだからと言って今更降参するつもりは無い。
エクスキャリバー云々以前にアルンが壊されるのは困るし、そもそも我らが友人たるトンキーとミコにそれでは顔向けが出来ない。

いや、まぁもらえる物ならもらう事もやぶさかではないが……

さて、殆ど落下するような勢いで全員が下方向に延びる階段を駆けくだると、やがて視界の先に明るい出口が見えた。

転がるようにその部屋に飛び込む。
其処は、八角形の部屋だった。13人のメンバーが半円になって中央に有る“それ”を取り囲む。

中央に有ったのは、五十センチ程の氷の立方体だ。其処に微細な毛細管のように、木の根がその中に閉じ込められ、それがやがて寄り集まって、太いそれが絡み合う巨大な根になっていた。
しかしそれは、やがて一か所で綺麗に断ち切られている。刀身を半ばで埋め込む形で根に突き刺さり……否、根を切り裂いて氷の台座に垂直に刺さって居るそれは、黄金に輝く一本の剣だった。
刀身に微細なルーン文字が刻まれ、柄頭には虹色に輝く宝玉がはめ込まれたそれは、間違いなく今回の目的。《聖剣エクスキャリバー》だ。

これと同じ剣を、かつてキリトとリョウ、アスナは見ていた。
ALOの真実が明らかになり、SAO事件が本当の意味で終わったあの日、コマンド一つで作り出せたそれ。それが、今は目の前に、しかし全く違う形で有る。

《最強の剣》。剣士ならば、誰でも憧れるフレーズだ。
しかしあの日この剣を手にした時、キリトはある種の嫌悪感すら覚えた。その時から、ずっと心の何処かで引っ掛かっていたその嫌な感覚が、今、ようやく拭い去られようとしている。
成り行きとは言え、プレイヤーとして、正しい過程を踏んだ上で、この剣の前に今自分は立っているのだ。
きっと、あの時より
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