第百三十六話 思わぬ助けその五
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それでだ、こう言うのだ。
「ではやはり今は」
「ですからそれがしは一人です」
また言う松永だった、今度は明るい笑顔になっている。
「この通り」
「では何故来た」
奥村は慶次とは違う、理詰めで動く男だ。それ故にまだ松永を信用せず警戒したまま彼に問うた。
「ここに」
「はい、朽木殿の領地に入られますな、今から」
「見ての通りだ」
奥村は左手に顔をやって答えた、そこには砦がある。その砦を見ながら松永に対して答えたのだ。
「あの砦が朽木殿の領地への入口よ」
「それで朽木殿の領地を越えればですな」
都に戻れる、そうなるのだった。
「すぐにですな」
「そうじゃ、しかしじゃ」
奥村は砦を見たまま難しい顔で言う。
「朽木殿が果たして無事通してくれるかどうか」
「朽木殿は浅井殿との関係も深いですしな」
松永もこのことを知っていて言う。
「それに公方様とも」
「公方様か」
「近頃公方様は殿に何かと不機嫌なものを感じておられる様で」
「それもあってというか」
「はい、ですから殿をお通しすることは微妙かと」
どうしてくるか今一つわからないというのだ。
「そこが問題ですな」
「それがどうかしたのか」
「はい、実はそれがし朽木守綱殿とは懇意でありまして」
「そうだったのか」
「左様です、この辺りの国人の方は大抵知っております」
「それだけ悪事をしてきたということじゃな」
「そうじゃな」
毛利が松永の話を聞いて言うと服部が頷く。
「どうせ朽木殿とも何かとな」
「悶着があったのであろう」
「懇意といっても実は敵であったのだろう」
「そうに決まっとるな」
こう話すのだった、彼等は松永には敵しかいないと思っている。実際に織田家で彼を消そうと考えていないのは信長と羽柴、そして慶次位である。生真面目で忠義一徹の平手なぞはことあるごとに彼を除けと信長に進言している程だ。
それで彼等もこう話す、だが松永はそうした言葉なぞ全く意に介せずそれで言葉を続けるのだ。
「おそらく朽木殿はあの砦におられますので」
「砦の中に入ってか」
「はい、朽木殿に通してくれる様お願いしてきます」
「砦の中に入って、じゃな」
森はここでもこう言う、手の槍はそのままだ。
「朽木殿をたぶらかして」
「考えられますな」
池田も森の考えに真剣な顔で頷いて応える。
「こ奴の場合は」
「それで殿を害するつもりであろう」
「そうであるな」
「ははは、この砦にいるのは精々数百でしょう」
松永はその彼等に顔を崩して笑ってみせて返した。
「それでは一騎当千の慶次殿の相手にはなりませぬ」
「ではどうだというのだ」
「ですから申し上げた通りです」
こう森に答える。
「それがしが説得してです」
「それでか」
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