マザーズロザリオ編
episode6 そら
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「書きあげてねっ! 私も、楽しみにしているからっ!」
ふわりと、風にさらわれるようにポリゴン片となって消えた。その小さな体の残した僅かなポリゴン片が俺の顔に反射する。唐突な、あまりにも唐突な別れ。
でも、俺は。
「おおっ、勿論だ! ぜってー書きあげっから、楽しみにしてろよ!」
笑って、拳を突き上げた。
それが、彼女の望みだったから。最後まで涙を見せなかった彼女に、俺の方が泣いては恰好がつかない。それはSAOで俺と一緒にいてくれた「ソラ」に対しても、このALOで俺を支えてくれた「チビソラ」に対しても、だ。だから。
「ぜってー、ぜってー最高の物語にしてやるから!」
天国まで、機械の世界まで届けと、その声の限りに叫んだ。
その声は、まるで自分のものとは思えないほど力強く感じた。
あたかも世界を救う、『勇者』の声のように。
◆
しかし。
「……あーっ、……」
「シドくんっ、なにか弁解はあるかなっ?」
「いやー……仕事の執筆で詰まって……」
「そのたびに私がメンタルケアに呼び出されるとは何事かーっ!!!」
「いやいや、そんな言ったって!!!」
「シド君のメンタルは豆腐だー! 豆腐メンタルだーっ!!!」
この物語は、そんなに綺麗には終わらないのだった。
終わらない、のだから。
シドと、彼を囲む愉快な仲間たちの冒険は、まだまだ、続いていくのかもしれない。
◆???◆
「おや、―――さん。今日は、起きていらっしゃるのですね」
和服の女が、問いかける。病室独特の真っ白いベッドにいる少女は、いつもはつらそうに眠っていることが多いのだが、今日はいつもとは違ってその体を起き上がらせていた。入ってきた和服の女性を見て、にっこりと笑顔を浮かべる。
「ええ、今日は調子が……、よくって、ですね」
少女の声は、掠れたように細かった。見れば体は痛々しいほどに細く、肌は抜けるように白い。色素というよりは『存在そのものの濃さ』の抜け落ちたようなその佇まいは、彼女の病院暮らしが非常に長いことを如実に表している。
そして、その折れそうなほどに細い指が。
「今日も、その本を読んでいたのですか?」
「ええ……ふふっ、ホントに、……おもしろくって」
テーブルの上に置かれた、本のページを、めくっていく。
「会いたいなあ。……この本を、書いた人に」
夢見るように、憧れるように、少女が呟く。
それは、少女がなんども伝えた言葉。
それに対して、和服の女は。
「ふむ……いいかもしれませんね。少なくともあちらには、拒む理由はもうないでしょう」
いつもとは、違う言葉
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