マザーズロザリオ編
episode5 『勇者』2
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て、しかもその洗練度は俺から見ても完璧としか言いようのない仕上がりだった。その舞うような戦技は、アスナやユウキ、そしてヒースクリフといったプレイヤー達と同じ、一つの戦闘スタイルの完成形としての戦いを感じさせた。
最速のプレイヤー。
そう呼ぶに相応しい動きを見せつける、闇を纏う影。
その影が、ふわりとゆらぐ。
背筋に走る強いざわつきに、慌てて剣を構える。
「っっ!!!」
瞬間放たれた裏拳気味の手刀は、《スライス・ブラスト》。銀色の手袋に激しいエフェクトフラッシュを反射させたその鋭い一撃は、狙いすました角度で俺の右手の剣の横腹を撃った。
ヤバイ、と直感的に悟る。奴の右手の《カタストロフ》の武器破壊ボーナスがどの程度のものかは実際見たことは無いが、大手ギルドのレイドを潰しているといことは相当のもののはず。しかし今ここで剣を引くわけにもいかない。走る罅が示す激しい耐久度減少が俺の背筋を一気に冷やすが、その罅はぎりぎりのところで停止した。
流石はリズベット自慢の一品、そうそう簡単には砕けない。だが。
(……余裕は、ない!)
既に、左右どちらの剣も耐久度は限界。長引けば、不利。
そう判断した、瞬間。
俺の意識の一部が白く、そして激しくスパークした。
二刀を握る両手が、燃える様に熱くなる。その意志に従って、俺のかつての世界に封印した行動回路が再び起動を始める。この世界では削除された、かつてユニークスキルと呼ばれた最強のスキル、《二刀流》。このALOには搭載されていないその剣技が、俺の頭の中から引き出されていく。
「おおおおおっっっ!!!」
激しい加速感のままに、絶叫する。
二刀流剣技、《ジ・イクリプス》。かつて存在した反則級の威力を誇る《二刀流》の、最上位のソードスキル。その連撃は二十を超える、最大の大技。この連続技は、ソードスキル特有のエフェクトフラッシュを纏うことは無い。しかしそれでも、減速した世界で振われるその金と青の剣は、ソードスキルを上回らんばかりの速度で加速していく。
これだけの複雑な軌道を描く連撃なら、たとえシドが分身しようと、何処から襲いかかってこようと、よけきれはしない。
(……倒す!)
俺は、ここで、この男を倒さなくてはならない。
真正面からその拳を受け止めて、その涙を、恨みを、背負っていかなくてはならない。
この男の怒りを、悲しみを、憎しみを、ここで断ち切るために。
俺は既に、エギルからシドのことについて大まかなことを聞いていた。
あのSAOで与えられた幽かな希望と、自分の意識の無い間にそれを奪われた絶望を。
その絶望の一端を作ったのは、俺だ。
ソラを生き返らせるチャンスを
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