マザーズロザリオ編
episode5 『勇者』2
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「るあああっ!!!」
「―――ッ!!!」
カッとキリトの目が見開かれ、その手が動く。本来は左手で放ったソードスキルの硬直中で動けないはずの奴の、右手から放たれた《バーチカル・スクエア》が俺の肩口を掠める。なんのカラクリかは分からないが、奴は硬直を無視してソードスキルを繰り出す技があるらしい。
(……また、だ。完璧にタイミング掴まれてやがるな……)
しかも、むやみに連撃を繰り出すのではなく、俺の技とキリトの技が交錯し、双方に硬直が入った瞬間をねらって撃ってくる。本来は技後硬直の短い俺に有利なはずの状況が、この技のせいで逆に俺が危なくなっている。
(……撃ち合いは、避けるべき)
だが、再び頭が真っ赤に燃えて、俺の体がひとりでに動き出す。
―――羨マシカッタ。羨マシカッタ。俺ハ、コノ男ガ羨マシカッタ。『勇者』ノチカラヲ持ッテ、俺ダッテ世界ヲ、皆ヲ助ケタカッタ。そらヲ、コノ手デ助ケタカッタ。ソンナチカラガ、俺ダッテホ
シカッタ―――
不利を承知で、真正面から挑みかかる。
キリトの剣が掠め、俺の貫手が刺さる。
「っ……!」
「くっ! ……っ!」
HPが減少し、二人のゲージが黄色く染まる。
そのたびに俺の心から暗い感情が溢れ出す。既に電源が落ちつつある意識が、その負の感情だけで世界と自分を繋ぎとめる。分かっている。理不尽な八つ当たりだと。意味不明な感傷だと。それでも、それらが俺の体を突き動かす。俺のエゴでしかない恨みをぶつける為だけに、拳を振い続ける。
そんな俺を、キリトは真剣な目で迎え撃ち続ける。
全て受けて立つと言わんばかりに。全てを受け止めてみせるとでも言うように。
―――恨ンダ。恨ンダ。俺ハ、コノ男ヲ恨ンダ。アノ世界ヲ途中デ終ラセ、そらヲ生キ返ラセル機会ヲ奪ッタコノ男ヲ、俺ハ恨ンダ。コノ男モ、そらヲ殺シタ一人ダ―――
―――俺と、同じように、ソラを殺した一人だ―――
激しく明滅する意識の中で、体が捻じ切れそうな勢いで引き絞られて放たれる、《スライス・ブラスト》。回転の勢いを余さず乗せた裏拳気味の手刀が、薄青く輝く長剣の横腹を打ち、その身にクモの巣状の罅を走らせた。
◆
強い。俺は改めて、シドの強さに戦慄を覚えた。
振われる手刀は完璧にその力をブーストしているうえに常に最善の軌道を走り、一切の無駄なく俺の体を狙い続ける。本来は技後硬直故に連続攻撃には向かないソードスキルを交えながらの、流れる様に滑らかで止め処なく繰り出されるコンボ。
そして何より、俺やユウキ、アスナ達と比べても一切の遜色のない……いや、上とすら思える、そのスピード。
(……さすがは、『旋風』……)
全てが完成されてい
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ