マザーズロザリオ編
episode5 『勇者』2
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ドの体が大きく回転、放たれる勢いを付けた強烈な踵落とし。
(―――《体術》スキル、《スピニング・スパイク》!?)
それは、彼の得意とする手数重視の技とは対極に位置する、有数の威力を持つ一撃必殺技。甘く見ていた。あの連撃重視の男がこんな……「らしくない」技を使ってくるなんて。
(なりふり、構わないわけかよ!)
あくまでこれは、「シドとの真剣勝負」なだけだと思っていた。違った。こいつは今、自分のスタイルを捨ててでも、俺を「殺し」に来ていた。憎しみの、全てを込めて。
目を見開いた俺に、霞むほどの速度での上からの蹴撃が襲いかかった。
◆
天井からの連撃は、いくらかキリトの意表を突いた感覚こそあったものの、それでも奴を叩き潰すには至らなかった。頭にヒットさせられればしっかり仰け反らさせられた自信はあるが、奴は《ヴォーパル・ストライク》の硬直が解けると同時に、凄まじい勢いで頭上に交差した二刀で受け止めてみせた。
(相変わらずの、反応速度……)
飛び退った後の、一瞬の硬直に舌打ちする。
強い。やはり、この男は、本物の『勇者』だ。
(……迂闊に攻めるべきじゃない、か)
今のところキリトは、俺の防具の『闇を纏うもの』と高速ステップの複合による疑似的な《ファントム・シェイド》による分身モドキのカラクリを見抜いていないようだ。今なら、これを最大限に生かして、一定の距離を取って奴が俺を見失う機会を見計らうべき。
頭の、冷静な部分が呟く。なのに。
―――ユルサナイ。ユルサナイ。俺ガ、コノ手デ、奴ヲ殴リ倒ス―――
けれども、俺の体は、心は、頭の冷静ではないほうの声に従って真正面から突進する。
「――――ッ!!!」
喉から洩れるくぐもった声は、もう人間のそれではない悲鳴。
突進して振う銀色の拳が、薄青い刃をもつ右手の剣と交錯する。
―――憎カッタ。憎カッタ。俺ハ、コノ男ガ憎カッタ。『勇者』ノチカラヲ持チナガラ、「そら」ヲ助ケテクレナカッタコノ男ガ憎カッタ―――
再び頭の冷静では無い部分が叫び、明滅する意識が熱を放つ。
硬直の隙にキリトの剣が振るわれ、俺の頬を掠める。キリトの剣は、途中からクリティカルポイントを狙わなくなった。俺のHPと防御力が高くない……あのSAO自体と同じように、極めて低いことを見て取って、一撃必殺を狙わずに削りきる戦法に出たのか。
だがそれでも、俺の拳をかわしきることは出来ない。そもそも極低威力の分、手数や速度は極めて優秀だ。いくら『勇者』の反射神経を以てしても、すべて避けきることなど不可能だ。二人の削りダメージは、目算で同等。
再びの、ソードスキルを纏った衝突。
その瞬間。
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