マザーズロザリオ編
episode5 『勇者』
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、行っててくれ」
「っ、あ、き、キリト君!?」
一瞬遅れて動揺が走ったメンバーに、俺は呼びかけた。ユウキ達七人パーティーが一瞬で構えた武器を、空いている左手で制する。こいつが俺の知るアイツなら、力はそこまで強くは無いはず。このまま拮抗状態に持ち込める。
「き、キリト、無茶よ! コイツ、大ギルドのレイド潰すボスなのよ!?」
「一端全員で戦うべきよ、お兄ちゃん!」
なおも悲鳴を上げる二人を横目に見ながら、裂帛の気合を込めて剣を押し返す。
飛び退る、トカゲ男。
俺の予想が正しければ。
―――キシャアアアッ!!!
怪物は、奇声を発してこちらを睨みつけ……予想通り、襲いかかってこない。
今までこのMobについて聞いていたAIなら、近くにいるメイジのシウネーさんやアスナに襲いかかっているはずだ。それなのに、その目はひたすらに俺を……俺だけを睨みつける。ありったけの、憎しみの感情をこめて。
やはり。
「俺は、コイツに、用があるんだ」
この男に俺は、正面から向き合わなければならないのだ。
◆
見抜かれた。
確かに、俺にも隙があったことは認めよう。隊後方を行く軽戦士であるキリトに真っ先に襲いかかったのは少々不自然だったし、そのあとの拮抗状態は完全に我を忘れての愚行であったが、それがあったとしても。
(……たったのそれだけで、俺の正体を見抜きやがった……)
名前も出ず、単身迷宮区をうろつくこの《グラン・ダークリザード》が、Mobではなくプレイヤーであることを見破りやがった。
「……俺は、コイツに、用があるんだ」
キリトの、食いしばった歯から洩れるような、呟き声。ありがたい。こちらも、用があるのはお前だけだ。他の面々は先に行って、ボスでも倒しててくれ。
納得したのか、それとも俺の奇声での威嚇が効いたのか、他のメンバーがキリトを置いて奥地へと駆けていく。ユウキが力強く頷き、シウネーが会釈して走り抜ける。最後まで残ったアスナが、心配そうにキリトを見つめ……困ったように笑って、去って行った。
離れ、徐々に小さくなっていく足音。
その響きが完全に消え去り、訪れる、静寂。
そうして、どれほどの時間が経ったのか。
先に口を開いたのは、キリトだった。
「もう、いいだろ?解けよ、Mob化」
知られているなら、意味は無い。
おとなしく、幻属性の呪文を解除する。
現れるアバターは、『ラッシー』のそれ。ということは、ネックウォーマーで顔は隠しているとはいえ、その目と髪はキリトにも見覚えがあるだろう。いや、たとえ姿形が違おうとも、奴は俺を見分けたかもしれない。俺が、あの世界とは異なる姿を持つ彼を、
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