暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
マザーズロザリオ編
episode5 『仲間』
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

 俺は、逃げていた。

 何もかもから、逃げ続けていた。キリトやアスナ、リズベット達からも逃げていたし、自分のことを話すことからも逃げていた。『シド』としてあれほど多くの場所を回り、アルヴヘイム中を旅してなお、あのデスゲームから受け継がれた『ラッシー』に宿るかつての俺の傷は、誰にも言わなかった。

 いや、言えなかった、のほうが正確なのか。

 思い返せばおかしなことだ。なぜ、言えなかったのだろう、俺は。自分の弱さを、形にしてしまうことが怖かったのか。はたまた、他の人に自分の弱さを晒すことが恥ずかしかったのか。あるいは、話すことで自分だけが楽になってしまうとでも思ったのか。……それとも、『彼女』が一人で耐え抜いたように、俺も一人で耐え抜いて見せたかったのか。

 だが、今、俺はそのこだわりを、捨てた。

 ユウキ達の……今を必死に生きる彼女らの為に、仲間を頼った。俺一人では太刀打ちできない相手を、倒すために。俺の全てを、俺はとうとう、話した。ずっと、ずっと俺といてくれた、この素晴らしい仲間達に。





 泣いた。
 一応男のプライドとして泣きたくなかったのだが、涙を堪えられなかった。

 「……ずっと、待ってた。話してくれるのを。……聞けて、良かった。……ソラも、喜ぶ」

 最初にかけられたのは、レミの声。
 いつも無表情で、無愛想で、何を考えているのか分からない、小柄な少女。

 ……いや。正確には、違う。今なら分かる。彼女は、ずっと考えていたのだ。何を考えてるのかは分からなくても、きっと俺が考えつかないほどに複雑なことを、考え続けていたのだろう。ソラの親友である、彼女だけが考えてあげられることを。

 「……守るんスよ。オイラが壁戦士(タンク)なんス。……守るのは、俺の役目ッスから」

 ファーの、力強い返事。
 あの頃より、遥かに強さを増した、安心感のある声。

 見違えた。このALOで再開したとき、俺はこの青年をファーだとはとても思えなかった。あの『冒険合奏団』の時代に見られた慌ただしさや弱弱しさが姿を消し、代わりに自信と余裕のある堂々とした立ち姿を見せる、ファー。強くなった。この男は、本当に強くなった。

 「……分かりました! 今度は、私が、シドさんを助けるんです!」

 明るい、モモカの声。
 歌うような美しい、人に安らぎを与える言葉。

 日に日に明るさを増す彼女は、目に見えて活動的になっている。このALOでも『サクラ・ヨシノ』としてイベントや旅行に積極的に参加し、精力的な活動を続けている。今までの辛い日々を取り返すか
の如く、純粋に、真っ直ぐに進んでいる。今も、真っ直ぐに俺を見つめてくれた。

 『全てを。貴方様の全てを知れて、私は幸福です。貴方様の
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ