マザーズロザリオ編
episode5 『仲間』
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
。
「おおおおおおおおっ!!!!!!」
俺は力の限りの吠え声を上げて、真正面から突っ込んでいった。
◆
音使い、音楽妖精。
各種のステータス値が他の戦闘系種族と比べて低いために戦地で見ることは稀だが、その種族固有のスキルは決して低くないポテンシャルを有している。先ほどモモカの使った、《呪歌》スキルもその一つだ。間合いの見極めや歌唱の上手ささえあれば、その効果は他種族の支援呪文とは比べ物にならないほどの効果を有する。
そして、開戦の幕を切って落とした彼女が使ったのは。
「な、なんだっ、コレ!」「くっ、体が、揺らいで……」「くそっ、た、確かプーカの、」
その《呪歌》スキルの中でも派生の応用技、《ハウリング・シャウト》。巨大な声で相手の平衡感覚を狂わせるこの技が、その細道の壁に反響して更に効果を増強させる。勿論、これほどに強力なスキルが利点ばかりであるはずがない。その効果は敵味方を区別することができず、音楽妖精以外のすべて…つまりは俺、『ラッシー』やツカサ、グリドースにも作用してしまう。
だが。
(当然、対策済み、だぜ!)
前衛の三人の疾走は、止まりも揺らぎもしない。
三人の耳を覆うプーカ領での販売品である耳栓。本来はVRワールドでの仕事や勉強のための音遮断用アイテムなのだが、実はこれは、戦闘中に使うことで《呪歌》や《魔譜演奏》といった音系のスキルの効果を打ち消すという効果も持っている。
当然、その代償として仲間からの指示の声は一切聞こえなくなる。
だが俺は、「指示など無くても、きっとその連携を成し遂げることができる」と信じた。
「おおおっ!!!」「はああっ!!!」「ぬううっ!!!」
絶叫を上げて走る三人の姿は、全くの同一。俺の防具は使いなれた《闇を纏うもの》ではない、もう少しランクの落ちる古代級の装備のマント。倉庫に丁度三つあったその装備はすっぽりと頭の先から腰までを包んでいる。
先陣を切ったのは、俺。
《暗殺》スキルを使わない、激しい光を纏った、全力の一撃。
大きく身を捩らせての回転の力を余さず乗せた、裏拳気味の手刀、《スライス・ブラスト》。そのエフェクトフラッシュを反射するのは、右手に嵌った美しい、それでいて禍々しい輝きを纏う銀の手袋、《カタストロフ》。
「おおおっ!!!」
その強烈な武器破壊のボーナスを受けた一撃は、前衛の構える剣を一撃で圧し折った。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ