マザーズロザリオ編
episode5 『魔物』
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だろう。理由は簡単、このMobなら《軽業》と《体術》、そして今回の生命線となるとあるスキルが使え、さらに桁違いに高い《索敵》《隠蔽》能力を持つからだ。
もちろん体の感覚が異なる欠点はあるのだが、今はそれを上回るアドバンテージがある。
(……さて、行くかね……)
それは、この「姿をMobに変える」という効果自体だ。
Mob状態の為に呪文が必要な透明化のスキルは使えないが、それでもプレイヤーにその技術があれば無音の移動は可能だ。狙うは、慎重に索敵を行っている前衛索敵担当では無く、後方に控える支援メイジ。豪奢なローブを纏うその姿は、メイジと言えども甘くない耐久度を持っていそうだ。
(二秒……いや、一・五秒、かね……)
有難いことに昨日は「上から落下しての強襲」を使いまくったために前衛達は天井を重点的に索敵している。それを読んで、今回は横道に隠れて背後からの戦闘に切り替えてある。三人全員の視線が離れた一瞬の隙を突いての疾走、ローブの男の首を背後から鷲掴み。
「……っ! ……−っ!」
口に当てた左手は、その声を完全に殺し。
右手の《クラッシュ・バインド》は、エフェクトフラッシュを纏わない。
それは、今回の作戦の切り札となるスキル、《暗殺》スキルの効果だ。
かつてのデスゲーム、『ソードアート・オンライン』ではあってはならないスキルだったが、この「異種族間なら自由にPK可」というハードなタイトルである『アルヴヘイム・オンライン』ではあってもおかしくない、いやなければおかしいとも言えるスキル。
非常に地味なうえに戦闘の派手さというある意味VRMMOの醍醐味とも言える視覚効果を消してしまう為に人気の低いスキルだが、こういった奇襲戦……そして、一対多数での戦闘では、生命線とも言えるスキル。
「……−っ!!! っ…」
一・五秒を正確にカウントし、《クラッシュ・バインド》の第二効果、威力倍加を発動させる。生じたダメージは過たずにメイジのHPをゼロにし、その体を音も光も無く消滅させた。これもまた、《暗殺》の上位スキル。
(……まずは、一人……)
このまま、もう一人いけるか、と思ったが、相手もそこまで甘くはなかった。
「前衛、後ろだっ!!!」
偵察兵の一人が、悲鳴にも似た声をあげやがったのだ。これではすぐに武器戦闘の五人全員が俺へと殺到してくるだろう。そして狙いであるメイジは後ろへと下がる。だが、まあいい。今回のようなワンパーティーなら、乱戦でも十分に対応できる。
なぜならこれは、こんな時の為の「Mob化呪文」なのだから。
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