マザーズロザリオ編
episode4 彼女の為にできること
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っかりと握られていた。
雨で冷たく濡れた印刷紙が、その時の俺には妙に温かく、脈打つように感じた。
◆
既に八割がた飛びかけていた意識を必死に繋ぎとめながら、俺はエギルと二人でその情報を整理した。どこまでであれば知らせて大丈夫なのか、どうすればアスナとユウキを会わせてやれるかを検討し続けた。
議論は深夜を軽く回る時間まで続いた。
それでも、俺とエギルの間に妥協などはありえなかった。
「分かった。アミュスフィアとは違う、新しい医療用の機械、『メディキュボイド』の使用者、か。これなら確かにユウキの可能性は高いな。場所は……『横浜港北総合病院』、か。臨床試験中の機械なんてそうそう一般には知られないからな……」
「……まあ、場所と、『メディキュボイド』使用者、っていうくらいでユウキのところまでは辿りつけるはずだ。俺の持ってるこの資料は完全に違法な手で入手したもんだから、知られたらマズい。さっきの二つなら、調べれば一般人でも分かるはずだしな」
結論に達したのは、もう夜の三時。
全てを終えて、眠気と疲労のピークが過ぎ去った頃。
店を後にする俺への、最後の会話は。
「全部任せて、お前は裏方だけですむと思うなよ? 人間はな、いつかは主役をやることになるんだよ。たとえ望まなくってもな。お前だって、向かい合わなきゃあなんねえ。アスナともリズベットとも……そして、キリトとも、だ」
「……ああ」
「お前もいい加減に認めろ。お前だって、一人の『勇者』だ、ってな」
予言めいた、重々しい言葉。
その言葉はまさに予言よろしく、この後の展開を言い当てることになったのだが。
◆
ユウキは、再びALOに復帰した。
以前と変わらぬ笑顔で現れた彼女は多くのプレイヤー達に祝福された。それは辻デュエルで六十人以上を斬ってのけた彼女の強さもその要因だろうが、やはりなによりも、そこにあるだけで人を幸せにする様な笑みの力が大きかったのだろう。
集まったメンバーでの突発的な迷宮攻略が成功して第二十八層のボスが討伐されたと聞いた時は流石に驚いたが、よくよく考えればあのメンツは『スリーピング・ナイツ』に加えてアスナやユージーン、そしてなによりあのキリトがいるのだ。ほぼ初見でボスが倒されたとしても、不思議は無いのかもしれない。
その攻略の後で彼女らが「二十九層もワンパーティーで撃破する」と言っていたと聞いた時は、柄にもなく嬉しかった。これが俺が彼女にしてあげられる最後の助けになることが分かったし、まだ俺が彼女にしてあげられることが遺されているということだったからだ。
そして、最後に。
その森の家での大パーティーには当然『シド』も呼ばれた。
しかし今回も、俺は
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