マザーズロザリオ編
episode4 曇天
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のはそんな状況でどれほど歩いたか、もう分からなくなった頃だった。
停止した思考のまま、画面を見つめる。表示されているのは。
「……エ、ギル……?」
ただ、その音を止めるために、携帯を耳元に当てる。
そこまでして初めて、もう時間が深夜を回っていることを知った。
『シドか? こんな時間にスマン。お前は、雑誌の記者の仕事をしているんだよな? ちょっと聞きたいことがあっ、たん、だが……』
「…………」
『……どうした? なにか、あった、のか?』
「……いや、何でもない。どうした?」
えらく慌てた様子のエギルの声が、徐々に徐々に、落ち着いて……いや、重くなっていく。
「……どうした? 俺に、……用事が、あるんだろ?」
『今、何処にいる? 御徒町の近くか?』
「……あ、ああ? ……っと……」
言われて、あたりを見回して、自分が雨の中かなりの距離を歩いていた事に気付いた。
蒼夜伯母さんが院長を務める病院はもう影すら見えず、周りには見覚えのある建物がいくつか見える。そこから考えるに、俺がSAOから帰ってきてすぐに運動がわりに散歩していた道のようだ。ということは。
「……近いな」
『分かった。ダイシー・カフェに来い。すぐに、だ。必ず、来るんだぞ』
エギルはすぐさまそう言って、それで俺の返事を待たずに電話を切った。
いや、返事を待たなかった、というよりも、「返事をさせなかった」というのが正しいか。
「ダイシー・カフェ、か……」
とても俺は、行く様な気分にはならなかった。
けれども、「必ず来い」とまで言われてしまえば、行かないのも悪いか。
鈍りきった思考のまま、俺は放りだすように足を行きつけの店へと向けた。
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