マザーズロザリオ編
episode3 宙を舞う
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
戦闘開始から、ジャスト一分。俺の加速した感覚は既に十分以上戦い続けているような錯覚をもたらすが、それと矛盾するように頭のどこかに存在する正確な時計が時間を刻み、そのカウントを取り続ける。まるで魚眼レンズでも嵌ったかのように鮮明な視界が一帯のプレイヤーの口元を浮き上がらせ、その唇が詠唱しているかどうかが瞬時に分かる。
(……いけるな)
減速した世界を見渡して、確信する。
キリト達が乱戦している方からはいくらかの魔法の炸裂音が響く(その割にはまだキリト達は闘い続けているようだ。あれだけの魔法を喰らえばまずHPなど吹き飛ぶと思うのだが)が、こちらの火力メイジ隊はもう完全に沈黙している。
(……ま、この辺は俺の「専門」だしな)
当然だ。俺はあの世界の頃、それもかなり早い段階からずっとこの乱戦を得意としていたのだ。近接戦闘に不慣れなメイジ相手に、遅れなど取らない。闇を纏った俺の体は、これだけの人数を相手に唯の一度の直撃無く戦場を走った。
(どうする……?)
走りながら、逡巡する。
このまま自分の役目をきっちり果たすか。
それとも、もう少し手を伸ばして、回復メイジ隊の詠唱まで邪魔しておくか。
はたまた、ユウキの支援に前線の連中を撹乱してやるべきか。
「くっ、くそっ!」「なんだ、こいつらの仲間か!?」「くらえっ!」
走り回っての攻防を繰り返しながら見る景色には、冷静さを失ったメイジ隊の中には思わず悪態をつく奴らまでいる。その無駄口を叩く行為は詠唱を行う為には邪魔にしかならないのだが、人間理性ではそう分かっていてもなかなかそれを律することは出来ないものだ。直接敵の攻撃を受ける前衛達ではないメイジならなおさらだろう。
(……行くか)
十秒を数えた時、俺は決断する。
後方のヒーラーも、俺が排除する。
まだHPは半分以上残っている。十分に戦えるだろう。
ブーツから無音の火花を散らして方向転換、ヒーラーへと突進すべく狙いを定め、
「――――――ッ!!?」
強烈な衝撃が、俺を背後から襲った。
呼吸が止まるほどの勢いで吹き飛ばされた感覚は、まるでトラックにでも撥ね飛ばされたかの(つっても実際にトラックに撥ねられた経験はないのだが)ようだ。もう少し詳しく描写するなら、現実でのリアルな……衝突と同時にトランクに叩きつけられ次いでフロントガラスを割る様な……撥ね方ではない、ぶつかった瞬間に空の彼方まで飛んでいく様な、そんな一種の漫画チックな感覚。
(おいおいっ、こりゃ……!?)
大きく宙を舞う俺が、回転する視界の中で下を見る。そこにいたのは、
(アスナじゃねえかよ……あいつ……)
細身の直剣を構
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ