マザーズロザリオ編
episode3 宙を舞う
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
えて猛然と突進する、美しい水妖精。
整った容貌に激しい意志の炎を宿しての強烈な突進技は、《フラッシング・ペネトレイター》。かなりの助走を必要とする使い勝手の悪い突進系ソードスキルだが、こういった乱戦では移動兼攻撃として非常に頼りになるスキル。
(突進技で突貫、かよ。相変わらずの『狂戦士』っぷりだなぁ、ったく……)
アスナは、戦線の後方から一気に加速して、敵ヒーラー部隊まで一直線にその突進技で駆け抜けた。おそらく、キリト達の負担を減らそうと、少しでも早く敵部隊を殲滅するために、自らヒーラーを排除しようとしたのだろう。
そして。
(ああ、なるほど……俺、軌道上だったのかよ……)
彼女は猛進していた。
……勿論、軌道上の敵を吹き飛ばしながら。
彼女は、真っ直ぐだ。とても真っ直ぐに自分の思いを貫き、その剣を振う。だがそれ故に、彼女はそれ以外のことは見落としがちだ。恐らく後ろから攻撃呪文が来ない理由も分からなければ、後ろに別同隊……俺みたいなやつがいて、敵を撹乱しているなど思いもしなかったのだろう。
(ま、分かってほしいわけじゃないけど、な……)
ちらりと見やると、視界の端で俺のHPゲージがあっさりとゼロになった。俺の装備品たちは古代級武具としてはかなり特殊な効果を有してるが、その分実質的な防御力は吊るしの防具並み、……簡単に言えば、かなり低い。必然、クリーンヒットを喰らえば、まあこんなもんだろう。
(あーあ……)
爆散したまま、しばらく色あせた視界を見守る。
視線の先ではアスナが鬼気迫る勢いで細剣を振い、瞬く間にヒーラー三人を切り捨てる。続けて間髪入れずに振り返って、呆気に取られて固まったメイジ隊めがけて突進する。同時に、前線がヒールが届かなくなったことで動揺し、その隙を突いたユウキ達の剣によって、次々にプレイヤー達が爆散していく。
(……これなら、大丈夫だな)
獅子奮迅の活躍を見せる、アスナ達七人。
加えて、なおも通路全体を照らすほどに輝く強烈なエフェクトフラッシュが、後ろのキリトやクラインの頑張りも伝えてくる。もう何度目か分からない、「俺いらなかったんじゃね?」の思考に苦笑しつつ、時間を迎える前にセーブポイントへと戻る。
俺はもうこの時、七人がボスを倒すことを疑っていなかった。
◆
俺……『シド』のアバターへと結果報告のメッセージが届いたのは、一時間と少しが経過した時だった。ちなみに俺はその時、『ラッシー』がドロップしたアイテムと失った経験値を取り返す為に、どこに狩りに行くかの旅プレイの計画を立てていた最中だった。……まったくやれやれだぜ。
「ま、結果として、良かったけどよ……」
ホームのロビー
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ