マザーズロザリオ編
episode3 音無く、闇を纏いて
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
(来た……!)
訪れた、絶好のチャンス。
その機会を、俺が逃すはずが無かった。
「――――ッ」
するりと、音も無く天井から落下。
遥か上からの落下にも関わらず、その体は一切の音を立てなかった。俺の脚を包むのは、《ブーツ・オブ・オトナシ》。移動補正や足技系の《体術》スキル威力上昇も大きいが、なにより『音無』の名に相応しい俺の知る限り最高レベルの消音効果がある。
降り立ったのは、アスナ達が襲いかかった方の、ボス部屋の扉付近にいる二十人のすぐ脇だ。
もう片方……あとから慌ててやってきた三十人は、キリトとクラインが相手をしている。あの黒の剣士がいれば、あちらは大丈夫だろう。キリトが「三分耐える」と手で示したなら、あいつは絶対にそれを成し遂げて見せる。問題は、こちらの扉を守る二十人を、アスナ達七人で殲滅できるかどうか。
(こっちにも、ヒーラーが三枚ついてるからな……)
「三分でヒーラーが付いた二十人を三分の一の人数で殲滅できるか」、とこのゲームの基準で言うなら、それは否だ。例え攻撃役がどれほど優秀だったとしても、相手が回復呪文を詠唱し続ける限り勝負は千日手になるだけ。
ならば、俺はそれをすぐさま殲滅するべきか。
確かに俺の『切り札』の一つは、その動作におあつらえ向きな性能を持っている。
だが、一呼吸だけ心を鎮めて、問い直す。
(……いや、違うな……)
俺の為すべきは、それでは無い。
最優先すべきは、「ユウキ達を守る」ことだ。
今現在、七人と二十人のほうの戦いは、しっかりと敵味方に分かれて戦闘が続いている。ユウキが頑張って乱戦に持ち込もうとしているが、それも敵の前線のすぐ後ろの武器攻撃メンバーのあたりまで、その後ろの魔法攻撃部隊までは突っ込めていない。つまりは、呪文詠唱の邪魔を出来ていない。
ならば、俺がすべきことは、一つ。
「―――ッ!!?」「なっ、なっ!?」「うわっ!!?」
豪奢な法衣《ローブ》を纏った部隊のど真ん中へと突入して、隠蔽を解いた。人混みに触れない様に走ったせいで、おそらくメイジ隊には目の前に突然俺が魔法の様に現れた様に見えただろう。その驚きのおかげで、大多数のメイジが息を呑んだせいで詠唱をロストした。
「―――ッ!!!」
無言の気合いを入れて体を回転させて放つのは、俺の持つ《体術》スキルでも有数の攻撃範囲を誇る大技、《スパイク・ハリケーン》。長い手足を生かした強烈な範囲攻撃がメイジ隊を撃ち、そのHPを揃って二、三割減少させる。と同時に突然戦闘が身近に発生したことで、何とか呪文詠唱を続けていた連中も詠唱ロスト。
(……よし)
メイジ隊。当然彼らボス攻略に赴くほどの魔法使いたちなら、そ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ