マザーズロザリオ編
episode2 路地裏ガッツポーズ
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気付くに決まっているではないか。
俺がどれだけの期間を、想いを、『彼女』と共有したと思っているのか。
『――どうでしょう? 引き受けてはもらえませんか?――』
問いかけるシウネーの声。
その後の、ゆっくりとした沈黙。
ユウキは……いや、それをいうならシウネーもだが、二人は、あまりにも『彼女』に似過ぎていた。賑やかなのに、落ち着いているのに、華やかな空気を纏っているのに、どことなく微かに『静けさ』を隠し持っていた。
それはかつて俺が横に寄り添ったひと……ソラに、そっくりだった。
ずっと病院暮らしで、長く生きることが出来ないことを知っていた、『彼女』と同じ空気。俺には無い、自らの生と死と真っ向から向かい合い、その苦しみや悲しみを乗り越えた……あるいは乗り越えようとしている者だけが纏う、気高い空気。
その空気を、俺は察していた。
アスナは、どうだろう。彼女だって、俺の知る紛れもない『勇者』の一人だ。辛い過去を、いくつもの強敵の屍を、仲間の死を乗り越えて、ここまで来た、気高い人間。ビーターだからと言って逃げた俺やキリトと違って、最強のギルド『血盟騎士団』の副団長として攻略の責任を負い、それを立派にこなして見せた。
(そんな『閃光』の目に、ユウキは適うかな……ははっ)
自分の心中で問いかけて、苦笑する。
あの、おっかなく見えて実は誰より優しい騎士姫殿の答えは、分かりきっていたから。
『……やるだけ、やってみましょうか。この際、成功率とかは置いといて』
聞こえたアスナの声に、俺は一人で小さくガッツポーズをした。
そして直後、路地の奥を覗う。人影なし。
……うん、見ている人がいたらどう見ても変態だったろうなあ。見られなくて良かった。
◆
アスナの返答を聞いてから、俺はすぐに『ラッシー』からログアウトして、『シド』として再び妖精の世界へと入りなおした。万が一に備えてこちらのアバターは第十二層主街区の宿屋に待機させてあったから、『ロンバール』に行くのにそこまで時間はかからない。下のアルヴヘイムには瞬間移動的な手段は殆ど無いが、有難いことにこの新生アインクラッドではかつてのような転移門がきちんと設置されているからだ。
(間に合えよっ……!)
それでも、その短時間さえももどかしいとばかりに急いで、宿屋兼酒場までの道を一気に駆け抜ける。流石に現在の最前線だけあってかなり人は多いが、こういうのを掻い潜っての疾走は俺の最も得意とするところの一つだ。難なくくぐり抜けて目的地に到着、一気に扉を開け……ようとして、一瞬躊躇した。
(……っ……)
アスナと正直、顔を合わせたくない。チビアバターで外見は大きく異なるとはいえ、『シ
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