マザーズロザリオ編
episode1 彼女との決闘
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して長大なものではないものの、それでも俺に比べれば間合いは当然広い。
離れれば、不利。
だが近づけば、俺のほうが有利。
「おおおっ!!!」
「やあっ!」
……なのだが、一気に距離を詰める俺に対して、ユウキは距離を取ろうとはしなかった。正面に剣を構え、突進する俺を真正面から迎え撃つ。俺の間合いを封じて勝つのではなく、真っ向から打ち勝ってみせるということ。
(……上等だ。この距離なら、俺も自信がある!)
それに応えるべく、体を捩じる様に引き絞る。伸ばした指先に宿る赤い光は、俺の十八番の単発貫手技、《エンブレイサー》。相手も何らかのスキルを放つ様で、黒曜石のような澄んだ黒の刃が薄緑に輝きだす。
瞬間。
弓を射る様に放たれた互いの技が、激しく閃光を上げて衝突した。
◆
結果は、惨敗だった。
打ち合い始めた時こそ俺の攻撃は確実に相手に着弾していたものの、HPの二割を削ったあたりから攻撃が避けられ始めた。逆に相手の攻撃の速さと鋭さはその練度を戦闘中にみるみる高まっていき、押していた俺は徐々に防戦一方となり、最終的には俺はユウキのHPを三割削ることすら出来ずにHP全損してしまった。
(驚いたね、全く……)
俺は手数で押すタイプの戦闘をするプレイヤーだ。その俺としては、ここまで鮮やかに攻撃を捌かれ続けたのは、正直片手の指に数えるほどしかない。彼女は、たった数分のデュエルで俺の攻撃を見切って。なおかつ鍛え上げた俺の回避能力をその剣技で上回ってみせた。
確かに今の俺の……音楽妖精『Shido』のアバター動きは、SAOデータ引き継ぎアバターの『D−Rasshi−00』に比べれば若干劣るが、それでもそんじょそこらの奴に見切られるような……もっと言えば、初見で見切られるようなものでは無い。
(……それを、ここまであっさりと、ね…)
爆散する瞬間、俺は少しだけ、唇をかんだ。
悔しかったのだ。
(一応、あの世界では、『彼女』に負けたコトなかったんだがな……)
ユウキへの敗北が、かつて俺の愛した人への敗北の様に思えたからだ。
一瞬だけ、「勝ったーっ!」といって笑う『彼女』の笑顔が、俺の瞼の裏に映った様な気がした。
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