マザーズロザリオ編
episode1 辻試合の舞台作り
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で交わされる、デュエルのやりとり。笑顔と、その中によぎる緊張、そして、隠せない高揚感。
表示される、デュエルの表示。
徐々に静まりっていくざわめきと、反対に高まっていく緊張感。
(さあ、見せて貰うぜ。……お前の、力を、な)
デュエルと同時に宙を舞った二人……いや、ユウキを、俺は瞬きもせずに見つめ続けた。
◆
ユウキの操る片手用直剣と、同色のアーマーは、市場ではかなりのレートで取引される古代級武具。そして羽織った上着と赤いカチューシャは、高レベル『裁縫師』であるブロッサムが、最高級の素材を用いて作った高級品の製作級アイテム。どれもこれも、この日のために俺が用意したものだった。
――― そ、そんな、悪いよ!
そう言って遠慮するユウキに「ボス攻略ならこれくらいは最低限だ」と昨日押しつけて装備させたばかりだったので少々不安だったが、それもまた、取り越し苦労だったらしい。そもそもコンバートしたてというだけで舐められるだろうに、自分の武器にも慣れていないとなるとどうにもならないかと思ったが、彼女はそれを一日で完璧に使いこなしていた。
「くっ、うおおっ!!!」
「やああっ!!!」
必死に繰り出される土妖精のランスを鋭く剣先で弾き、同時に懐に飛び込んでの連撃。オリジナルでこそないものの激しいエフェクトフラッシュを纏って繰り出されたソードスキルが、男の既に赤く染まっていたHPゲージをゼロにした。
と、同時に。
「うおお!すげえ!」「何人目だよ!?」「やべえよ、はええ!!!」
周囲の観客から、大きな歓声が上がった。
(こいつは、予想外だな……)
その歓声に、俺は少しだけ鼻白む。最初の方こそ驚愕やざわめきしか生じなかったが、その数が二十を超えたあたりからそれは反転、その凄まじい剣技を褒め称える歓声へと変わっていった。それを、それだけのことを為すほどの剣の美しさが、ユウキの戦いには、あった。
(……ま、納得だが、な)
「ありがとー! ありがとー!」
「……ははっ、参ったな、完敗だ。ありがとう」
「うんっ、ありがとうね!」
元気よく周囲の観客に手を振り、シウネーが蘇生させた対戦相手と握手をかわすユウキ。
彼女は本当に楽しそうだったが、俺は正直、頭を悩ませていた。
(こりゃ、想像以上だね……嬉しい誤算か、はてさて……)
ユウキの強さに対して、相手が、弱すぎた。
一応俺も、かつてのクセのせいか日常的にある程度はアルヴヘイムの情報を収集している。当然毎月の統一デュエル大会の上位者達の名前くらいは押さえているのだが、今回はそういった名のある実力者は来ていないようだった。
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