マザーズロザリオ編
episode1 『魂』の再会
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を装ってどこかへ行くか。いや、俺は何を言っているんだ。
必死に考える俺は恐らく、向こうから見れば相当にテンパって見えたのだろう。
そんな目を回す俺の様子を見て、闇妖精の少女がクスリと笑って。
「どうしたの? ボク達に、何か用かな?」
笑顔で返答を返してくれた。
その言葉は、声は、「彼女」とは違ったけど。
その温かさは、俺に紛れもない「彼女」の温もりを思い出させてくれた。
◆
心配そうな顔をする水妖精の女性に向かって「大丈夫大丈夫!」とにっこりと笑って少女は俺についてきた。俺は下の『アルヴヘイム』を主な活動の場とする為あまり来ないとはいえ、一応この『アインクラッド』にも行きつけの店くらいはある。
十二層の《圏内》村のNPCショップ、『ファスト・ブレイカー』。
看板娘のNPC少女の笑顔のせいか一時期はちょっとしたブームになった店だが、次層が解放されて一月もすれば皆の興味は移っていき、今では閑古鳥が鳴く様な小さな喫茶店。だが俺は、ここで食べる軽めの食事が、今でも好きだった。
「はじめまして、だよね? ボクはユウキ。よろしくね!」
「…シウネーと言います。はじめまして」
「俺は、シド。よ、よろしく」
元気よく挨拶する闇妖精の少女……ユウキに、未だに俺を警戒する水妖精の女性……シウネー。
そりゃあ警戒もするよな。どう見てもナンパだし。
しかし俺は、こういう時どうやって誤魔化すかを咄嗟に考えつくほどに、経験豊富ではない。まあ嘘をつくのは苦手ではないが、それでもこんな……初対面の女性二人に対して芸達者な嘘を付けるほどの達人というわけではない。仕方なく、正直に答える。それがどうしようもなく、ナンパの常套手段としても。
「あー……ホントに芸が無くて申し訳ないんだが……そっちの、ユウキ? が、ちょっと俺の知り合いに似ててな。ここにいるとは思わなかったから、思わず話しかけちまったんだ……って言っても、信じて貰えねえよなぁ……」
信じられるわけねーだろ、と、自分で自分に心中でツッコミを入れる。情けなさに喋る声が、だんだんと小さくなる。完全に言い訳をする小学生だ。俺の小柄な音楽妖精の外見と相まって、さぞや弱弱しく見えることだろう。
だが、「あたりめーだアホ」の言葉は無かった。代わりに。
「へ? ウソなの?」
ユウキの目が、キョトン、と開かれて、首が可愛らしく傾く。
「い、いや、ホントにホントなんだが……」
「そっかー。ボクに似てるの? ここにいるとは思わなかった、って言うことは、ALOをプレイしている人じゃないの? リアルとか、他のVRMMOとかの知り合い?」
「……似てる、っていうか、雰囲気がな。随分前に
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