星屑の覚醒
5 紺碧の闇
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星など見えない。
近年、鳥が大量にビルに激突して死亡するということが環境問題として取り上げられている。
この街はその先導者と言っても過言ではない。
深夜でも人の溢れる交差点を通り、暴走族がCRF250MやCBR125Rなど学生でも手に入れられるマシンで爆音を立てながら通り過ぎて行く。
そして裏路地を覗けば、大人数に殴られ、金品を奪われるのなど珍しくもなく、ひったくりなども病院を抜け出して、まだ1時間程度でありながら2件も目撃した。
だが捕まえる気もない。
思い知らされた。
この街ではどんなに正しいことを主張しても、弱者に手を差し伸べることも無力に他ならない。
街を支配する議会など公務員たちも腐っている以上、そんな大人を見ている子供も腐っていくのは当然だった。
終わらない連鎖だ。
だからこそミヤが傷つけられ、今まで受けてきた暴力への怒りが爆発しても正々堂々と公の場で恨みを晴らすことなど出来ない。
暴力と言っても一概に定義することは出来ない。
拳による肉体的暴力、陰口、暴言による心的暴力。
自らもその腐らなければ、対等に戦うことは出来ないと理解した。
だが最終的に立ち塞がるのは恐怖心だ。
腐るためには平気で人を傷つけられる心と、殺しても罪悪感を抱かないだけの強い心が要る。
人を蔑み、恐怖を逆に利用することに抵抗を無くす。
それは自分自身では不可能だった。
「...」
彩斗の脳には次から次へとすれ違った人間の心の声が聞こえていた。
無意識に脳波を操作し、あらゆる人間の脳にシンクロを繰り返す。
そして読み取れるのは案の定、予想していた感情ばかりだった。
恐怖 孤独 暗闇
どれも恐れる感情だった。
結局は1人なるのが怖いというだけの話だ。
無視され孤立するのが怖いから、たとえ人を大人数で無視して笑いものにして屈辱を与えようとも罪悪感を抱かない。
保身しか頭にない。
それによって苦しんでいる者がいようとも。
彩斗は街に絶望しきり、残ったのは激しい怒りだけ。
自分でもおかしいことくらいは分かっていた。
今の自分の顔はメリーには見せられない。
なぜか笑っている。
口が裂けそうなくらいに口を広げ、不気味な笑みを浮かべている。
何かしら笑っていないと自分が保てなくなっているのだ。
パーカーのフードを被り、極力顔を隠すようにし、黒い封筒を握りしめながら目的地を目指した。
息苦しい街を脱し、ようやく本来の世の中を見ている気分だった。
断崖絶壁で海と月が視界に広がっている。
もはや建物など見えない。
デンサンシティは基本的に自然に囲まれた都市だ。
中央部だけは発展していても少し街を出れば、田舎どころか人など住んでいない。
これが本当の世界だった。
「この辺りのはずだ...」
彩
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