第三十九話 次なる課題
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族って嫌われてるよな、俺も今じゃ貴族なんだけど。
まあ確かに嫌がった。でもね、金を借りてる立場というのは弱いのだよ。文句は言っても勢いが無い。それに不当に利子を取っていた金貸し共からその分を取り戻してやったからな、かなり借金は軽減された。それだって政府だから出来たわけで連中じゃ出来なかった。
連中は政府の命令を受け入れざるを得ないのだ。あんまりぐずぐず言う奴には潰すと脅した。借金を政府が金貸し共に返した以上、領地経営に失敗した貴族なんて潰しても経済危機は起こらない。ゲルラッハ子爵は銃殺刑だと語気荒く言った。馬鹿共は真っ青になって謝ってきたな。
「しかし将兵達が驚いたのは貴族に決算報告書の提出を義務付けた事です。あれは我々も驚きました」
ラインハルトの言葉に皆が頷いた。確かにこれまでなら有り得ない事だ。だが改革を行うとなればいずれは出た話だろう。
「反対が大きかったのではありませんか?」
「それはもう、……しかし意外な味方がいましたから」
「と言いますと」
「フェザーン商人ですよ」
俺とラインハルトの会話にファーレンハイトが“なるほど”と頷いた。他の二人、いやラインハルトも入れれば三人だがファーレンハイトは彼らに比べると経済に明るいようだ。
「改革を進める以上帝国政府は貴族に対して特別扱いはしなくなると彼らは想定しているのです。これまでは貴族という事で比較的危険が少ないと判断して取引を行ってきましたが今後はそうはいかなくなる。しかし取引相手としては貴族は非常に魅力的です。という事でリスクの有無を判断出来る材料が必要となる」
「なるほど、それが決算報告書ですか」
ラインハルトが頷いた。
「それと資産目録です。領地経営の状態と家の財政状態、それを開示しろ。そうでなければ貴族との取引は安心して出来ない、そう言ってきたのですよ。実際に今回救済した貴族達の借金の理由は殆どが遊興費です。領地経営の失敗が原因の借金はごく僅かです。彼らの要求は極めて妥当でしょう」
「フェザーン商人の要求を断れば商人は近付かなくなります。そうなれば自領の特産品の売買に影響が出かねない、財政状況にも悪影響が出る。そして政府を怒らせれば益々貴族達の先行きは危うくなる」
「家を潰すくらいなら、そういう事ですか」
「ええ、そういう事です、ケンプ提督」
決算報告書、資産目録の一件ではフェザーン商人の協力が大きかった。改めて思ったのはフェザーンの自治領主府とフェザーン商人は別だという事だ。自治領主府はどうしても政治的な動きを行うが商人にとっては経済活動が第一だ。帝国の改革は自治領主府にとっては面白くないだろうが商人にとっては必ずしも否定するべきものではない。
ルビンスキー対策の一つとしてフェザーン商人を味方に付けるというのが有るだろう
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