第6話 遠山家
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それにしても……お前もキャラメルのようないいニオイが……」
マジメモードの終わったらしい爺ちゃんが、かなめに顔を近づけ匂いをレキのように嗅ごうとしたら――
「おやキンジ、おかえり。あれまあ、可愛い女の子だねぇ」
――ゴスッッッ!
いつも間にか現れた、俺の婆ちゃんによる、喋りながらのベリーショートパンチが叩き込まれた。
爺ちゃんは「ほぉぷっ!」などという声にならない声を上げ、向かいのブロック塀まで吹っ飛ばされ、がしゃ、がらがら……衝撃で壊れたブロックの下敷きになっていく。
「……しゅ、『秋水』……!」
初めて見た。遠山家の奥義の一つを。意外すぎるシチュエーションでだが。
「『秋水』? なにそれお兄ちゃん?」
驚きのあまり声が漏れていたらしく、かなめが初めて聞く言葉に反応する。
「ん……ああ。家に入ったら教えてやる。今の婆ちゃんの動き、よく覚えておけ」
「あ、うん。分かった」
かなめも遠山家の一員になったんだ。教えてやってもいいだろう。
ただし奥義の技名と、理屈だけな。
遠山家の技は基本的に、手取り足取りは教えてもらえないものなのだ。
なので、見様見真似で覚えるしかないんだ。
だから今の秋水はよく覚えておけよ。
俺も爺ちゃんという尊い犠牲のもとに実演を見せてもらって、ようやく実践方法が掴めたところだ。……できるかなこれ、ヒステリアモード時。
「おいジジイ! 掃除が面倒になるだろ!」
というジーサードの怒声なんかどこ吹く風で、婆ちゃんは……
「おいでキンジ。金花の『揃いぶみ』があるよ。ミントちゃんもかなめもお入り」
曲がった腰の後ろに両手を戻し、ノンビリと家に入っていく。
婆ちゃん……帰ってくること聞いて、買ってくれたのか。揃いぶみ。
俺が小さい頃に好きだったのが、婆ちゃんの中では現役なんだなあ。
いや、いつまで経っても、俺は婆ちゃんの中では子供なのかもしれないな。
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