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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第3話 「余の顔を見忘れたかっ」
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 皇太子殿下が仰るには、下手にあの女の子かわいいね、なんて言うと問答無用に、連れてきてしまうそうです。

「本当に悪い事をしたと思ってる。お前だって好きな奴の一人ぐらい、いただろうにな」

 そう言われても私には好きな人というのは、いませんでしたし、どう答えていいのかも分かりませんでした。ただこれからは勝手に連れてくるなと、お命じになったというのを、メイドたちから聞き、私の方こそ、皇太子殿下の迷惑になっている事を知ったわけです。

 ■皇太子の間 オットー・フォン・ブラウンシュバイク■

 ルードヴィヒ皇太子殿下の下に私はオイゲン・リヒターとカール・ブラッケの両名を連れて行き、紹介した。二人とも貴族でありながら、自ら貴族の称号である“フォン”を外している変わり者だ。しかし皇太子の目はどことなく冷たい印象を受ける。
 冷笑という表現がふさわしいように思えるほどだ。
 彼らの語る改革案を聞いた皇太子殿下は、

「絵に描いた餅は食えん」

 と仰られ、机上の空論を述べる暇があるなら、憲法の一つも考えて来い。と言い放った。

「……憲法」

 二人の呆然とした表情をわしは生涯忘れる事はないだろう。
 わしとしても同じ思いだ。
 それにしても憲法とは……。まさか皇太子殿下ご自身の口から語られるとは、思ってもみなかった。皇帝主権の専制国家である銀河帝国。それも皇太子殿下が自らを縛るであろう憲法を考えて来いとは、いやはやこのお方は、どこまで先を考えておられるのか?

「貴族領の直接税を下げ、領民に余裕を持たせる事によって、間接税の税収を上げる。それぐらいの事ならガキでも思いつく。さらに貴族からも税金を取れば、一石二鳥だ。だがそれだけでは、オーディンに近い、大貴族達はともかく、辺境は苦しむだけだ。間接税は一律だからな。力の弱まった貴族では辺境開発はできん。じゃあどうする。俺がお前達に求めるのは、そこだ。よく考えてから出直して来い」

 産業基盤の拡大。インフラ開発。確かに考える事は多々ある。
 平民達の権利の拡大はやるべき事をやってからだ。権利はあっても、食えなきゃどうしようもあるまい。皇太子殿下らしい、お言葉だ。

「首都オーディンで道や橋が必要かと聞かれれば、いらんと答える者も多いだろう。生まれたときから揃っているからな。しかし辺境では、お前達が有って当たり前と思っているものすら、無い状況だ。ちっと現状を甘く見てないか、うん?」
「せ、戦争を……や……め……」

 リヒターが俯き、顔を真っ赤にして呟いている。小さすぎてよく聞こえん。

「そう思うのなら、戦争を止める理由を考えろ。止める方法を持って来いっ!! 永久にとは言わん。五年か十年でいい」

 皇太子殿下には聞こえたのか?
 五年か十年、戦
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