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久遠の神話
第四十九話 スペンサーの剣その十七
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「アメリカ政府の意向を」
「こうしたことを誰か、他の政府に話す政府はありますか?」
「ないですね」
 言うまでもないことだった。こうしたことを内密でも他の国のの政府に言う政府なぞある筈のないことだった。
 実際に工藤も高橋も話してはいない、そういうことだった。
「必ず」
「ですが日本政府にも、いえ世界にも」
「世界ですか」
「悪い話ではないと思いますが」
 スペンサーは確信を以て断言する。
「それは」
「アメリカが永遠に世界のリーダー、警察であることはですか」
「今以上にならず者国家はいなくなり絶対の正義の下で主導されるのですよ」
 話すのはアメリカの論理だった。完全にそうだった。
「そしてそれによってです」
「世界は導かれるというのですね」
「それが悪い世界の筈がないと思いますが」
 こう工藤、そして高橋に話していく。
「どうでしょうか」
「即答はできません」 
 工藤は今はこうスペンサーに返した。
「私の一存では」
「できないですか」
「はい、私は貴方と違い国家元首に相当する存在からこの場合の判断を委ねられていません」
「だからですね」
「返事は今すぐではないですか」
「そうです」
 返答は今でなくてよいとスペンサー自身も言う。
「お待ちします」
「ではです」
「こちらから出向いてお話をしますので」
 こうして話は整った。敵同士になるかも知れないがやり取りは紳士的に進み終わった。そしてそれからだった。
 二人はスペンサーと別れた。その上で高橋はこう工藤に言った。
 帰り道は歩いてだ。夜道を歩きながらの話だった。
「敵になりますかね」
「おそらくな」
 工藤はこう高橋に答えた。
「確かに日米安保はある」
「ですね」
「しかし。アメリカが永遠に世界の盟主でいるというのはな」
「日本政府としてもですね」
「確かに日本政府には野心はない」
 そうしたものとは無縁だ。このことは間違いない。
 だがそれでもだった。工藤はこのことを言うのだった。
「しかし永遠にはだ」
「それはどうもってなりますね」
「アメリカがどうとかいう問題ではなくだ」
 アメリカのやり方についての話はとりあえずは置かれた。
「それでもだからな」
「そうですね。一つの国が永遠に支配するっていうのは」
「よくはない。それにだ」
「それにですね」
「他の国に永遠に盟主に居座られて気分のいい国はない」
 例え野心のない日本政府でもだというのだ。
「そういうことだ」
「しかも今回は公では絶対に言われないことですね」
「日米安保は公だ」
 表の政治の話だというのだ。
「俺達の戦いは絶対に公にはならない」
「では、ですね」
「大尉とは戦うことになるかもな」
 工藤は確かな声で言った。

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