第四十九話 スペンサーの剣その十三
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そうしながらこう竜に言う。
「いい攻撃だ」
「余裕だな」
「余裕はない」
スペンサーはそれは否定する。
「かわすだけでかなりの労力を使っている」
「そうか」
「その通りだ。君は確かに強い」
スペンサーは竜に答える。
「だが」
「だが。何だ」
「君は尾は一つしかない」
ここでこのことを指摘するのだった。
「そして頭もだ」
「一つずつか」
「それなら勝てる」
「私を侮っているのか」
「侮ってはいない」
スペンサーは竜を見上げつつ言う。
「全くな」
「しかしか」
「そうだ。君は確かに強い」
スペンサーも否定しない。
「だがそれでもだ」
「貴様は私以上に強いか」
「少なくとも頭と尾は一つずつだ」
それならというのだ。
「勝てる、それならだ」
「そういうことか。だが」
竜もスペンサーをその赤く爛々と輝く目で言う。牙からは相変わらず紫の毒が滴り落ち続けアスファルトを溶かし続けている。
「私の毒と力を侮らないことだ」
「どうかな。少なくとも尾はだ」
かわしている。今もだ。
「こうしているがな」
「そうだな。尾はな」
「君の動きは見切った」
だからかわせるというのだ。
「この通りだ」
「確かにこれでは駄目だな」
竜自身も言う。
「貴様を倒せはしない。ではだ」
「毒だな」
「それですね」
工藤と高橋も見ていてわかった。
「それが来るな」
「いよいよですね」
「あの毒を受ければ」
どうなるか。それは工藤が言った。
「誰もがあのアスファルトの様になる」
「溶かされて終わりですね」
「強さはヒュドラーの毒と同じだな」
ギリシア神話でもよく知られあのヘラクレスさえ死に至らしめたその毒と同じだけの強さがあるというのだ。
「少しでも触れると」
「死にますね」
「溶かされ苦しみ抜いて死ぬ」
間違いなくそうなるというのだ。
「かなり危険だ」
「大尉でもそうなりますね」
「確実にな。大尉はそれをどうするか」
「勝てる自信はあるみたいですが」
それはスペンサーの言葉からわかる、これは間違いなかった。
だがどう考えても容易に勝てる相手ではない、工藤や高橋が見てもだ。
しかしスペンサーでもその毒は受ければ終わりだ、だからこそ二人もこの闘いはスペンサーにとって危ういものだと思っていた。
だがスペンサーだけは冷静に竜の尾をかわしていた。尾で倒すことが出来ないならばもう一つの武器だった。
竜は息を吸い込んだ。工藤はそれを見て言った。
「ブレスだ」
「竜の息ですね」
「よく小説やゲームの竜は火を吹く」
「吹雪とか雷とか強酸とかもありますね」
高橋もゲームからこれは知っていた。
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