第三十八話 夏の巫女その十
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「どんどん食べてね」
「本当にこれだとね」
里香もその三輪素麺を食べながら言う。
「幾らでもね」
「食べられるでしょ」
「うん、お素麺ってそもそもあっさりとしてるけれど」
「三輪素麺だとね」
やはり味が違うからだ。
「幾らでもでしょ」
「ええ」
「おかわりもあるから」
景子は母親と同じことを言った。
「遠慮なくね」
「食べていいのね」
「お酒もね」
素麺だけでなくそれもだった。
「飲んで。冷えてるから」
「ああ、このお酒ってあれだよな」
美優は素麺を一口食べてからコップに入れたその酒を飲んで言った。
「大吟醸だよな」
「そうなの、お供えで頂いたね」
「いいねえ、やっぱり大吟醸は違うよ」
「特にその大吟醸はね」
「他の大吟醸とはまた違うよな」
「美味しいわよね」
酒もまた、というのだ。素麺と同じく。
「これだけだとね」
「いやさ、景子ちゃん楽しみにしてって言ったけれど」
美優は笑顔でその景子に言う。
「それでもこれはさ」
「予想以上だったのね」
「ああ、凄いよ」
笑顔で飲みながら言う。
「じゃあどんどんな」
「わんこそばみたいに食べてね」
笑顔でこうも言う景子だった。
「お素麺本当に一杯あるから」
「早いうちに食べないよね」
彩夏も食べながら言う。彼女のおつふの中には梅がある。
「のびるから」
「そうそう、お素麺ってのびるからね」
琴乃も食べながら応える。
「だから急いで食べないと」
「お素麺を食べるのって時間との勝負だからね」
「どうしてもそうなるのよね」
細いだけあって早くのびる、素麺の問題点だ。
「だから急いで食べてね」
「ええ、飲みながらね」
「飲むことは後でもいいけれど」
こちらはだった、とにかく今は。
「お素麺全部食べて」
「お素麺の後はね」
ここでまた景子が四人に言う。
「お刺身もあるから」
「あっ、それもね」
「それもあったのよね」
四人も言われて思い出した。
「それじゃあ」
「お素麺の後はね
「お刺身をね」
「お刺身は鰹よ」
正確に言えばそれはタタキだ、鰹のタタキである。
「凄く美味しいからね」
「おいおい、タタキかよ」
美優はタタキと聞いて満面の笑みで言った。
「いいねえ、お素麺に続いて」
「鰹のタタキ好きなの」
「ああ、大好きだよ」
こう言うのだった、景子に。
「いいよな、お醤油につけてな」
「鰹のタタキにも大蒜よね」
琴乃は美優が醤油について言ったところで鰹のタタキをつける醤油について話した。
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