第三十八話 夏の巫女その八
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「実はね」
「何だよ、また」
「何を読もうか迷って」
それで今も読書感想文だけは終わらせていないというのだ。
「それだけ残ってるのよ」
「他は全部終わったんだよな」
「ええ、全部ね」
そちらは終わったというのだ。
「あとそれだけなのよ」
「難しいな、そりゃ」
「どうしようかしら」
「まず読まないとな」
美優は湯舟の中から言った。
「それからだからな、読書感想文って」
「そうよね、何読もうかしら」
「その金閣寺にする?」
里香は今もこの作品を話に出した。
「そうする?」
「金閣寺なのね」
「そう。どうかしら」
「長いの?金閣寺って」
琴乃は湯船の中の里香に顔を向けて彼女に問うた。
「どうなの?」
「そうね、それ程じゃないわね」
「特に長くないの」
「普通位よ。一日あればね」
「読めるのね」
「そう、金閣寺はね」
一日あれば充分読めるというのだ。
「読めるのよ」
「そうなの。じゃあ」
それにしようかとだ、琴乃は傾きかけた。だがここでだった。
ふとだ、本当に唐突な感じでこの作家の名前を出した。そのうえで里香に対して問うたのだった。
「そういえば里香ちゃんって色々な本読んでるわよね」
「ううん、まあ最近文芸作品に凝ってることは確かだけれど」
「谷崎潤一郎とかは?」
「春琴抄とかだとね」
「春琴抄?」
「そう、他にも幾つか読んでるけれど」
「谷崎で何か面白いのない?」
琴乃は里香に谷崎の作品でそうしたものがあるのかどうか尋ねた。
「何かね」
「そうね、谷崎の作品でなのね」
「手頃に読めて読書感想文になりそうなの」
「谷崎で土lクシャ感想文はね」
それはというと。
「かなり限られるわよ」
「そうなのね」
「結構危ない作品も多いから」
谷崎は耽美派に属するとされている、そlの為作品によっては読書感想文にそぐわないと思っていい作品も多いのだ。
「選ぶけれど」
「じゃあ止めた方がいいかしら」
「あるにはあるわよ」
里香は諦めかけた琴乃に答えた。
「面白い作品ね」
「どんな作品なの?」
「美食倶楽部っていう作品なの」
里香がここで出したのはこの作品だった。「それなの」
「美食倶楽部ならね」
「面白いのね」
「かなり変わった作品だけれど読んでいるとね」
そうしているだけでだというのだ。
「美味しいものが食べたくなるのよ」
「そんな作品なの」
「確かに結構耽美な場面もあるけれど」
この辺りは谷崎故だ、春琴抄にしてもそうだ。
「それでもね」
「それでもなの」
「そう、この作品は面白いわよ」
「じゃあそれ読んでみようかしら?」
「どうするの?私のお家に来て借りるの?」
「持ってるの?美食倶楽部も」
「ええ、載って
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