士官学校の天才
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肩をすくめた。
あちらにはこちらのように近づく人間はいない。
全てを拒絶するような空気を醸し出しながら、さらに口調が強さを増した。
『全員に貴様の無能さを教えてやる。この戦いは録画して公開するが構わないな』
「嫌だと言っても、するのでしょう」
『いま謝れば、そこまではしないでやる。これでも同じチームなのだからね』
「謝るって何にですか?」
『よかろう、存分に辱めを受けるがいい』
打ち切るように呟けば、向こうの筺体の大型ライナーがゆっくりと降りた。
同時に、こちらも操作してライナーを下ろす。
完全に降りれば、周囲のざわめきはなかったように静かになる。
ワイドボーンとの通信も途絶え、まるで一人だけの世界のようだ。
正面のモニターに、今回戦う戦場が選ぶようになっている。
それらが向こうの操作でランダムで確定し、自戦力と相手の戦力が決定した。
数はどちらも同数の一万五千隻。
こちらは青で攻撃――相手が、赤で防御側であるらしい。
補給線に難を抱える相手にとっては嬉しい事であろうが、今までの戦い方を見てもワイドボーンが防御戦に徹した事はない。おそらくは敵の防御施設に到達する前に、どこかで戦闘を起こすであろうことは明白だ。それでも補給が近いのは彼には朗報だろう。
通常であれば、引きずりだして別働隊で防御陣地を制圧――もしくは、補給線を狩り取るってのが常道か。
そう考えながら、アレスは手元のコンソールで隊列の準備を整えていく。
モニターに映し出す文字がカウントダウンを告げて、残すところは一分を切った。
ヤンと戦って、負けたとしてもワイドボーンが補給線を重視する事はなかった。
それは彼にとっては補給線とは預かり知らぬことで、それで負けたとしても彼が負けたと理解していなかったのだろう。
だからこそ、いまだに負けていないと考えている。
それでは意味がない。
いまだに負けがないと考えて、思考が硬直している人間に対して同じように補給線を叩いたところで、結局思考の硬直は解けないだろう。
ならば。
「これが戦術シミュレーターでよかった。本番なら犬死もいいとこだ」
そう呟くと、アレスはゆっくりと艦隊の編成を行っていった。
ざわめきが大きくなって静まり――やがて声も出なくなる。
戦闘終了のブザーが鳴り響いて、筺体全部のライナーがゆっくりとあがった。
誰も言葉にできない中で、スーンが最初に確認したのは、アレスだった。
疲れたような様子を隠さない姿。
何と言うか、酷く無駄だと思っているんだろうなとスーンは思った。
らしくない戦いといえば、らしくない戦いだったのだろう。
開始の数分――正確には倍速された時間であるから数時間だが――で、不思
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