士官学校の天才
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「つまり貴様は私に従いたくないと、そういうのだな」
「違います。従えというのであれば、納得させて欲しいと、そう言っているのです」
「面白い。では、今から少し付き合え。周りは審判だ――無敗というのが所詮、井の中の蛙だったことを教えてやろう」
ローバイクの手を振り払って、ワイドボーンが歩きだす。
血走った瞳に、テイスティアと、コーネリアでさえ小さく震えていた。
人の怒るところってのは、傍目には面白いんだがな。
自分に振りかかるのはあまり面白くない。
苦笑しながら、立ち上がればローバイクが困った人を見るようにこちらを見ていた。
あまり挑発するなということなのだろうか。
こちらもしたくてしたわけではない。それでも今ならばそれで駄目でしたですむが、実戦ではすまない。実際に人が死ぬわけだ。
その時に、駄目でしたですまそうとさせたくはない。
「その、ごめんなさい」
まだ座るコーネリアの隣を通れば、小さな謝罪の声が聞こえる。
不安げに見上げる姿に、気にするなとアレスは首を振った。
――いずれ潰すのが、少し早まっただけなのだから。
+ + +
学校内の戦術シミュレーターをおいた区画。
放課後になれば解放され、予約があれば誰でも使えるようになっていた。
そこに当然とばかりに割り込み、さらに最上級生の主席が血走った目をしていれば誰でも気になるのだろう。
既に着席したワイドボーンの周囲には、放課後であるにも関わらず多くの人が並んでいた。
「何かやると思ってたけど、初日にやるとは」
「アレスはもう少し自重という言葉を覚えた方がいい」
当然のように集まっていたクラスメートのからかいに、アレスはため息を吐いた。
「残念だ。君達がそういう目で俺を見ていたなんて」
「それ以外の目で見られたかったの。じゃあ……尻出して?」
「同室だと、凄い洒落にならないから!」
スーンとフェーガンが笑いだした。
ワイドボーンの示した対面にある筺体に向けて歩きながら、アレスが尋ねる。
「で。倍率はどうなんだ」
「まだ時間も経ってないけど、今のところ1.2と4.7でワイドボーン優勢かな」
「なんだ。低いな、最低でも10倍くらいいくかと思ったけど」
「同級生だと君に賭ける割合の方が多いんだよ。フォークと戦う前ならよかったんだけどね。あと、三次元チェスで君に負けた先輩たちも君に賭けているみたい」
「見た顔がいるわけだ。俺に30ディナール賭けといてくれ」
「了解。頑張って」
小さく笑って離れるスーンを見送って、筺体に腰をかければ正面でワイドボーンが睨んでいる。
『聞こえるか、蛙』
「聞こえてますよ。先輩」
ヘッドホンを耳にしたとたん漏れる言葉に、アレスは小さく
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