士官学校の天才
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ている。
その様子に、小さな舌打ちが聞こえた。
「うるさい男だ。気にするな、奴の成績は下から数えた方が早い――来年には退学じゃないのか。戦術シミュレーターの成績も見るところがない」
笑顔でリシャールに答えながら、そう小さくワイドボーンは呟いた。
なるほど、こちらに敵対的ではなかったのは成績を見られていたからか。
確かに実技分野を無視すれば、そこそこ自分は優秀なのだろう。
アレスがそう苦笑すれば、扉が開いて残る三年生と四年生が入室した。
「四学年、ケイン・ローバイク」
「同じく、三学年。ミシェル・コーネリアです。これからよろしくお願いします」
そこにいたのは大柄でとても未成年には見えない老けた四年生と、学生にしては少し長めで、栗色のウェーブがかった理知的な女性がいた。
+ + +
「やあ。よく来てくれた、二人とも。私がマルコム・ワイドボーン。これからよろしく」
嬉しそうに立ち上がるワイドボーンの様子から、おそらくは二人とも優秀であろうと予測が出来る。いや、赤点という名の退学があることを考えれば、四年や三年になったという意味では十分優秀なのだろうが。
単なる高校と違い士官学校は、学校によって選択される。
点数が足りないからと甘くしてもらえるわけではなく、単純に成績が低ければあっさりと退学処分となるのだ。むろん、戦場の兵士からすれば点数を甘くしてもらえた上官が来ると言う事の方が地獄なのだろうが。
「さ。皆、椅子に座ってくれ」
進められるように円卓の椅子に腰を下ろした。
ワイドボーンを筆頭として、四学年のローバイクと三学年のコーネリアがその左右に座る。こちらはテイスティアと名乗る下級生と並び正面のワイドボーンに向かい合う格好となった。
全員が座ったのを見届けて、机の上で組んだ手をおいて、ワイドボーンが口を開いた。
「さて、まずはルールの説明をしよう。先日配られたルールだ、皆読んでくれ」
投げるように渡された紙には、戦術シミュレーター大会の要旨が記載されていた。
大会では、まず五つのグループに分けられる。
AからEまでのグループで、ワイドボーンのグループは最終週のEグループだった。
元より大会といわれても、五千人近い士官学校のチームが参加する一大大会だ。
全てをトーナメントするには、あまりにも時間がかかり過ぎる。
そこで一つのグループに対して一週間のトーナメントを行い、それぞれの優勝チームが戦術シミュレーター大会の決勝大会に出場するという想定であった。
アレスは手元の書類を素早くめくる。
同じグループにヤンの名前がない事に、ほっとしたようにため息を吐いた。
「見ての通り、私達のグループは非常に厳しいと言えるだろう」
語られた言葉に、
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