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ニュルンベルグのマイスタージンガー
第一幕その五
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第一幕その五

「何も」
「ではマイスターのことは」
「とりあえず職人の歌手達ですよね」
「そうです。貴方は詩人ですか?」
「いいえ」
 また首を横に振った。
「では歌人ですか?」
「それでもありません」
「職人であったことや弟子であったことは」
「全く聞いたことがありません」
 そしてそれが何故かも言うのだった。
「今までずっと領地にいましたので」
「それですぐにマイスターになられるおつもりですか」
「そんなに難しいことなのですか?」
 ヴァルターはきょとんとして彼に問い返した。
「それ程までに」
「あのですね」
 ダーヴィットは彼が何も知らないことがわかってまずは内心溜息をついた。そうしてそのうえで彼に対してあらためて語るのだった。呆れた表情を何とか隠して。
「マイスタージンガーには一日じゃとてもなれませんよ」
「そうなのですか」
「はい。私は靴屋の職人でして」
 自分のことも語るのだった。
「そしてハンス=ザックス師匠について一年ですが」
「一年」
「そう、一年です。それでやっと職人、まあ徒弟です」
 己のことをこう語るのだった。
「靴を造るのも詩を作るのも私は一緒に習うのです」
「その二つは一緒なのですか」
「そうです、一緒です」
 彼はまた語った。
「靴を平らに打ちなめしたら母音や子音の使い方を習って糸や蝋を固くしながら韻の押し方を会得します」
「それもですか」
「そうです、どれが男性韻か女性韻か」
 さらに語る。
「寸法はどうか、数は幾つか、靴型を前掛けの上において」
 話は続く。
「そして何が長いか短いか、固いか柔らかいか明るいか暗いか」
 これだけではなかった。
「孤児とはだにとは、糊の綴音とは、休止とは、穀物とは」
「まだあるのですか」
「花とは茨とは」
 本当にまだあった。
「私はこういったものを全部学び取ったのですよ」
「それで上等の靴もですか」
「はい、ここまで辿り着くだけでも大変です」
 また述べるダーヴィットだった。
「一つの詩の大節は多くの中節等から成っていて正しい糸で上手に縫うものは正しい規則をよく知っていて」
「ふむ」
「よく出来た小節やそういったもので底を固めます」
 さらに言う。
「その後でようやく終わりの節が来るのですがそれは長過ぎても短過ぎてもいけません」
「どちらでもですか」
「そうです、どちらでもです」
 彼はさらに語る。
「そして韻の踏み方も同じでないといけません。そしてこういったものを全部覚えてもまた真っ当な靴屋の親方にはなれないのですよ」
「これは驚いた」
 ヴァルターはここまで聞いて唖然としてしまった。
「私は靴屋になるのではなく歌の芸術が」
「それもなのですよ」
 何とそこにもあ
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