第一章 バブルキット
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。ここ件に関してはあまり操作に乗り気ではないデイビットだがケビンにこう言われては行かないわけにはいかない。
「火に油を注がなきゃいいんだけどな。」
デイビットはポケットをまさぐり車のキーを探しながら意味ありげにウィンクした。
保安官事務所から3マイルほどしたグヴェン雑貨屋の前が今回の現場だった。大柄の警官が立ち入り禁止の黄色いテープをあたりに張り巡らせている。5度目ということもあり近隣の住民たちもざわざわといろんな噂話をしているのだろう、野次馬はどんどん増えていった。
「通してくれ!保安官だぞ、道を開けて!」
横をふと見ると応援の警察官が雑貨屋の店主に話を聞いているところだった。そうとう困惑してるのだろう、視点が定まっていない。デイビットはこの店主とも面識があった。なんどかドラッグの所持を金と引き換えに見逃している。念のため数日間、隣の州の警察署で保護されるという話の様だが、普段目立たないように暮らしていた店主もこのような形で警察の厄介になるとは思いもしなかっただろう。
「あぁ、デイビット。見てくれこれ、酷い臭いだ。」
先にテープをくぐり現場に入っていたケビンが言った。
たしかに酷い臭いだ。どの現場でもそうなのだが人を焼く臭いというのはどうにも受け付けないものがある、しばらくバーベキューはできないな、デイビットは思った。
テープを跨いですぐのところに被害者はいた。雑貨屋のドアのすぐ隣で上半身を起こし、壁にもたれかかるような姿勢で置かれていたようだった。ぐったりとしたその死体は前の4人と同じで顔が丹念に焼き切られている。
デイビットは青ざめた。その顔のありさまを見たからではない、この被害者を俺は知っている。その男の言葉が何度も頭にこだました。
「こいつでどうかお願いできませんかねェ?こいつでどうかお願いできませんかねェ?」
血と焦げで黒ずんではいたが赤と青のまだら模様のジャケットに王室の金の留め具が皮肉のように煌めいてた。もう、この男に狡猾さはない。細くいけ好かない目があった場所にはぽっかり二つの穴が開いている。この焼け焦げた顔の無残な死体は1か月前にデイビットと取引した男、あのバブルキットだった。
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