第三十二話「長ネギは大変体に良いのです!」
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その光景は、この場にいるすべての人たちに少なくない衝撃を与えた……。
幾世もの時を歩み、神話にも登場する堕天使。その圧倒的力はいまだ底を見せない。
そして、そんな堕天使と対峙するのはただの人間にすぎない博士。しかも手に持つ武器? は八百屋に置いてあるような普通の長ネギ。
そんな話にもならない、冗談のような対決。俺たちの予想は当然のように堕天使――コカビエルに軍配があると思っていた。
しかし、結果は――。
「これが、黒の教団……」
「あのコカビエルが手も足も出ずに負けるなんて……」
そう、結果は……コカビエルの惨敗に終わった。
絶句する皆の視線の先には全身を血に染めグラウンドに倒れ伏すコカビエルの姿があった。それを、長ネギをむしゃむしゃ食べながら見下ろす博士の姿もある。
「まぁったく……つまらない戦いでしたねぇ。いや、戦いというのも正確ではありませんか。一方的な蹂躙でしたからぁ。ただのカラスが人間に刃向おうなんて、三兆五千万と十二年百二十日十一時間三十二分五秒早いんですよぉ。あっ、その時にはわたくしぃ、もう寿命で死んでいますねぇ! その頃は丁度冥界の三丁目で居酒屋を開いていますかぁ! いやぁ、なぁんてドジなわたくしっ!」
「……博士はいつも、ドジ」
「いやぁ……人間ミスはするものですねぇ! アヒャヒャヒャヒャヒャ!」
カラカラと笑う博士。そんな彼の隣では小さくため息をつくイングリットの姿があった。
そう、博士の言う言う通り、あれは戦いなんて言えるものではない。まさに蹂躙という言葉がしっくりくるような、そんな光景だった。
――まるで、相手の未来が見えているかのような立ち回り。攻撃するタイミングや狙いもすべて看破し、予定調和だったとでもいうような、そんな光景が広がっていたんだ……。
一見意味もないような行動。しかし、時間が経過するとその意味を取り戻す。そんな博士の行動の連続で、コカビエルはまさに手も足も出ず、案山子のように突っ立っているだけで、なにもできずに敗れた。
というか、ただの長ネギでどうして二メートルはあるような極太の光の槍をぶった切れるんだよっ!
「んん〜、そぉれは、このネギがただのネギにあらず……長野産の長ネギだからでぇっす!」
「ナチュラルに心を読むな!」
思わずつっこんでしまった俺。だめだ、博士のペースに狂わされる一方だ。
ていうか、長野産? 長野産なのそのネギ!? 長野産のネギはそんなに強いのか!?
「とぉぜんですよぉ。農家の人たちが汗水たらして栽培して下さってるんですよぉ? そんなネギがカラス如きが出す
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