本編 第一部
二章 「恋と危険は何故か似ている」
第十話「豊村伊佐の過去」(後編)
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
は手が出せない。なにより伊佐自身が神仙の域にある術者であるから、そしてそのうちに宿りしものがそこしれないので、イルミナティは、慎重にならざるをえなかった。なにしろ、その時点では伊佐にやどるものが神に敵対するものかそうでないのかまったく分からなかったからだ。それからあらゆる調査が始まった。まず、交霊術による霊的存在との通信をとろうとした、しかし彼女の体の中の霊的存在はまったく呼びかけに答えなかった。
イルミナスという組織は、教会が「悪魔」とするこの世に仇なす全てのものを調べる機関だ。だが、この伊佐に宿るのはどうも「悪魔」と判別するには、矛盾するところがありすぎた。まず、イルミナティが言うには、憑り代である伊佐という存在が、まったく精神的にも肉体的にも高位の存在であるというのだ。伊佐は、仙人によってあらゆる道に一つの悟りを得ている。イルミナティのどんな人間も伊佐に、人間的尊敬を覚えたという。彼らは、教会の教義に厳格だ。だから、神という存在にしか答えられない問いというものをいくつも知っている。そして彼らはそれらをまるで伊佐という存在をためすようにことごとくぶつけてみたのだ。だが彼女は、面白そうにそれらを聞いて。その場にいる人間すべてに納得のいく掲示をしてみせた。それは、「悪魔」が人を惑わすようでもあり、「神」が、人を使わした指示のようでもあり、イルミナティの人間はさらに迷った。だが、しだいに誰もが彼女がこんなふうに自分を扱っているというのに嫌悪や恐怖を一切もたない、伊佐の心に救われていた。
だが、伊佐の誕生の瞬間に起こったことがやはりイルミナティは気がかりだった。
そして、もしかしたら神の御使いの一人がまさに今我々の前に現れたのではと思い始めた。だが一人、伊佐をどこまでも邪見する組織の幹部がいた。そのものは、どこまでも伊佐に宿るものに挑戦的だった。神にしか答えられない問いに不可思議な力で答えるなど、人間の身でそれをするならやはり伊佐は悪魔だと、ここでこのものは伊佐に一つ問いを出した。おまえは、自分をいったいなんだと思っているのか?と伊佐は実に朗らかに笑って、
「わたしは気持ちよく人間であり女だよ」といった。この一言がこの幹部の反感を買ったやはりただの人間にすぎないのだ。ならこいつは聖者か魔女かのどちらかだ。火あぶりにしてみれば、わかる。
この幹部の男は少々人間が小さかった。そしてとても臆病だったのだ。彼は無意識に伊佐を怖がっておったのだろう。そしてあろうことか伊佐に向かって銃口を向けた。あらかじめ、この者は伊佐とその親が手出しできない弱みを握っていた。伊佐の中学生の時の友達を人質にとっていたのだ。そしていった。
「おまえとそこのこいつの親ども、絶対に抵抗するな、抵抗すればこの友達を殺す。なあに、神がおまえに味方するなら、なにか奇跡を起こすさ」そいつは
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ