本編 第一部
二章 「恋と危険は何故か似ている」
第八話「神武不殺」(だが修行で死んだら元も子もねえんだよ!)
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「おお、もう起きとったか、今日は蛇がかかったからこれを朝飯にしよう、ああ、伊佐は果物の方がいいか?イチジクが取れたから食え、おまえはまあ仮にも女だ、少しは美容を気にしなさい」
「じいちゃん、いい加減、こいつにもなにかもっとましなもの食わせてやれよ、蛇なんてこいつ、それに殺されかけたんだぞ?」
「なあに、焼いてぶつ切りにしちまえばうなぎの蒲焼と変らんよ、ふふ、それともおまえがこいつになにか料理を作ってやるか?」
「いいのか?じいちゃん、じゃあちょっとなにかもっとましな食い物取ってくる、おい賢治なにが食べたい?なんでも言っていいぞ?」
「ん〜じゃあ、朝飯だし、なんかさっぱりしたものがいいな」
「さっぱりか、う〜ん、ま、いいや考えながら採ってくるよ、あんまり期待するな?」
そういって、伊佐は、山の林の奥へ、あっという間に消えてしまった。
「ふふ、おまえさん、よっぽど孫の好かれてるな?あれは、あんまり周りに興味を示さないんだが。おまえのこととなると機嫌がいいのう」
「じいさん、そんなこといって、俺と一緒に寝かせといていいのか、孫娘なんだろ?」
「うん、あいつはそういうことを気にせんからな、荷造りのときに全部あいつに任せたのが間違いだった。ま、ええじゃろ、おまえさん本当に、自分を制しておける人間らしいからの」
「自分を制する?」
「そうじゃ、自分をある一定の線以上へは越えさせないようにできるということじゃ。近頃の若い奴は、ほれ、少し肩にぶつかったとか、からかわれたとかですぐカッとなるじゃろう?まあ、もうそこで自分の面子にかかわるからなんじゃろうが、のう、軍鶏というのを知ってるか?」
「ああ、鶏を戦わせあうんだろう?」
「そう、鶏というのは、あれで結構臆病な奴でな、しかし気位だけは高い。だから、少し、攻撃されると猛烈に怒って相手が死ぬまで攻撃する。馬鹿な生き物だよ。もうほとんど反射的に侮辱に報復するから、それがかえって自分の立場を危うくさせているのに気がつかない。分かるだろう?攻撃的なくせに肝が据わっておらんそういう奴はほんとうに強い奴には立ち向かえない」
「はは、剣持先輩みたいな生き物ですね」
「じゃが、おまえは違う。腹が据わっておる。だから、無闇に怒ることもしないし、過度に力に頼ったり、欲望に身を任せたりもしない。わしはな、賢治、人間とはどうあるべきか、とよく考える。するとやはり、人間は、戦士としての形をしておるのが一番よい、とそう行き着く。戦うというものが人間の本質にある。祈り続けたり、戦いを避けて逃げたり、だがどうだろう、どこまで祈れば人は救われる?どこまで逃げれば平和にたどり着ける。人はやはり最後には戦いを避けられない。戦わない人間は戦える人間に殺されるのだ。
だが私の言う戦士とは、殺しあうための戦士ではない。無論この今の世は楽
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