崑崙の章
第17話 「……殺戮(キリング)、機械(マシーン)……」
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実に決まったはずだ。
命があったことは幸いだが……起きてこられるような状態じゃないはずだ。
だが、やつはふらふらとしながらも、柵に掴まり立ち上がろうとしている。
「お前……バケモノか」
思わず呟く。
だが、その呟きが、やつの身体を硬直させた。
「!?」
とたんに、俺の周囲に殺意が満ちる。
あまりのことに、俺の身体が条件反射で臨戦態勢を構えさせた。
なんだ……今の殺気は。
「………………」
周りには俺とやつ以外は、誰一人としていない。
だが、この周囲を圧迫するような膨大な殺意はなんだ。
まるで何重もの殺意の”目”に見張られているような錯覚。
その殺意の元――
「北郷盾二……貴様だというのか」
思わず呟いた瞬間。
目の前にいたはずのやつが、消えた。
「な――――――」
気がつくと、俺は吹き飛ばされていた。
石畳の上に顔面から叩きつけられる。
「ガハッ!」
瞬時に体勢を立てなおして、起き上がる。
だが、すぐ目の前に、やつはいた。
腹に一撃。
防ぐ間もなかった。
バキバキという、肋骨が砕ける音が、確かに聞こえた。
「ぐはっ!」
よろける俺に、さらに右足と左腕に衝撃が走る。
何が起こったかも確認できないまま、俺の視点は反転した。
気がつけば、石畳の上にうつ伏せになっている。
「がっ……ぐっ……」
右足、左腕ともに、完全に砕かれている。
俺は視線だけを前に向けた。
そこにやつはいた。
そして、氷のような冷たい目で俺を見下ろしている。
(だ、誰だ、こいつは……)
その目は、まるで機械のように凍りついた眼。
全身を血で朱に染め、確実に虫の息だった男の眼ではなかった。
それはまるで……
「……殺戮、機械……」
俺は、于吉より伝えられた、やつの根底にあるモノの名を呼ぶ。
その言葉に、ビクンッと震え――
瞳から、光が消えた。
(やられる――)
覚悟した。
俺が、殺されることを。
だが、その”瞬間”はやってこなかった。
俺がゆっくりと顔を上げ、やつの顔を見る。
やつは――北郷盾二は。
仁王立ちしたまま、気を失っていた。
―― 盾二 side ――
夢を見ていた。
そう、これは夢だ。
夢を客観視している、俺がいる。
なぜなら……目の前で、俺が戦っている姿が見えるからだ。
戦う……というのは、少し違うな。
稽古をつけてもらっている、が正しい。
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