暁 〜小説投稿サイト〜
ニュルンベルグのマイスタージンガー
第二幕その二十二

[8]前話 [2]次話

第二幕その二十二

「止めるぞ、早く!」
「やっと気付いたか」
「何?」
 今度はこちらで不穏な空気が漂いだした。
「やっととは何だやっととは」
「だからやっと気付いたかって言ったんだ」
「わしを馬鹿にしているのか?」
「他にどう聞こえるんだ?」
「貴様!」
 ここでも掴み合いになりだした。
「もう一回言ってみろもう一回!」
「ああ、何度でも言ってやる!この間抜け!」
「もう許さんぞ!」
「おい、止めろ!」
「止めるんだ・・・・・・うわっ!」
 止めようとした一人の腕が誤ってもう一人を殴ってしまった。するとまた。
「御前か、やったのは!」
「違う、俺じゃない!」
 闇夜の中なので相手がよく見えず別の人間に殴りかかる。
「御前だろう、他に誰がいる!」
「何っ、やるのか!」
「ああ、やってやる!」
 騒ぎが大きくなり一人がまた別の一人の足を踏んで。
「御前がやったな!」
 彼も喧嘩に入る。騒ぎはさらに激しくなっていった。
「靴屋か!」
「仕立て屋か!」
「パン屋か!」
「何処のどいつだ!」
「貴様か!」
 最早マイスターも徒弟も何もなかった。それぞれ殴り合い掴み合い蹴り合う。その中でベックメッサーは何とかダーヴィットから逃げるがその時何人かを突き飛ばしそのうえで足を踏んでしまい。これがまた騒ぎを引き起こしてしまったのだった。
「今踏んだな!」
「突き飛ばしたな!」
「御前がやったな!」
「許さないからな!」
 めいめいそれだと思った相手に喧嘩を売る。そうして騒ぎはさらにうるさくなり町の人間をさらに呼んでニュルンベルグの夜は大混乱に陥っていた。
「桶屋が!」
「肉屋が!」
「鍛冶屋が!」
「御前等、うちの親方に何をする!」
「そっちこそうちの弟子にだ!」
 親方同士で殴り合う者もいれば身分を越えて殴り合う者達もいた。
「何をするんだ!」
「放せ!」
「殺すぞ!」
「こっちにいるのは床屋か!」
「頭をちょん切ってやるぞ!」
 切るかわりに掴んでいた。
「禿頭にしてやる!」
「雑貨屋!ここにいたか!」
「御前は菓子屋の息子か!」
「不良品なんぞ売りつけやがって!」
「そちこそ糞まずい菓子売りやがって!」
「鼻血流せ!」
「耳を千切ってやる!」
 最早何が何なのかわからない。
「逃がすかこの野郎!」
「逃げるものか!」
「蝋燭屋がいたぞ!」
「錫屋か!」
 また店同士の喧嘩になる。
「御前がやったのか!」
「そこにいるのは鋳掛屋か!」
「毛織職人か!」
「貴様は麻の!」
「皆集まれ!」
「親方を救え!」
 中には棍棒まで持ってそのうえで殴り合う者達まで出て来ていた。

[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ