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銀色の魔法少女
第四十話 殺意
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 それからの有様は、まさに異常だった。

 ベテラン執務官が一人、AAA級魔導師が二人、SSS級魔導師一人の計四人が束になってもたったAAA級騎士一人に敵わない。

 クロノはまるで悪夢を見ているようだった。

 彼の今までの経験が全く役に立たない相手が目の前にいる、それが信じられなかった。

『普通あのタイプには遠距離戦が効果的なんだけど、当たる前にかわされる』

 クロノは試しに何度も魔法弾放つが、それらは彼女に傷を与えることはなかった。

 一度なのはがバインドで捕まえたこともあったが、すぐにそれを凍らせて、砕いて脱出してしまった。

『それにいつも一対一の形に持っていかれるから、援護ができないの』

 なのはの砲撃だと、他の人を巻き込む可能性があった。

『どうにかして彼女の動きを止めないと、いつかやられる』

『…………ん?』

 フェイトの言ったその言葉に、クロノはかすかな違和感を覚えた。

 先程、彼女は「痛みも感じないうちに終わらせる」と言った。

(それはただのハッタリくらいのものだと思っていたが、おかしい)

 今度はよく観察してみる。

 こちらの攻撃は彼女に当たりもしないが、それは彼女も同じだった。

 クロノも刃もなのはも、バリアジャケットの一部を損失してはいるが、体は無傷。



 そう、装甲が薄い(・・・・・)フェイトも同じだった。



 今、また遼の剣がフェイトに当たるが、バリアジャケットの表面をかすった程度で終わる。

 つまり、遼の目的はバリアジャケットを傷つけることにある。

(まさか!?)

 クロノがそう思った時には、遅かった。

「そろそろいいかな、クロノに気づかれたみたいだし、終わらせるよ」

『Gleipnir(グレイプニール)』

 カートリッジが四発、ノートゥングが排出される。それが合図だった。

「え!?」「うそ!?」「なっ!?」「しまった!」

 四人の体が破損部分から凍りついていく。

 本来、遼は離れた所にある物体を凍結させることはできない。

 しかし、対象一つにつきカートリッジを一つ消費することで、それを可能にしていた。

 けれど、通常は手で触れただけで凍結させることができる遼にとっては、これは燃費が悪いのであまり使いたがらないが、今回だけはこれが最適だった。

 一人一人凍らせていては復活される恐れがある。

 けれどこれなら一度に全員凍らせることができる。

「じゃあ、最後の仕上げだね」

 彼女は剣を待機状態に戻す。

「あ…………」

 次に彼女が取り出したのは、フェイトにとって思い出深いものだった。



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