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剣の丘に花は咲く 
第九章 双月の舞踏会
エピローグ
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 カップを弄りながら、ルイズは呟くような声で問いかける。
 
「ええ……あなたのおかげで」
 
 ティーカップに伸ばしたアンリエッタの手が一瞬カチリと固まったが、直ぐに何事もなかったように動き出す。その様子を冷めた瞳で見つめていたルイズが、すうっと静かに顔を上げる。
 ルイズの鳶色の瞳が、真っ直ぐアンリエッタの瞳を貫く。
 じっと、値踏みするかのような目で、ルイズはアンリエッタの瞳を見つめる。アンリエッタは、ルイズのそんな視線をただ無言で受け止め続ける。
 ルイズの部屋に、無音の軋む音が響く。ギリギリと音も無く軋みを上げるそれは、次第に大きくなり……そしてそれが限界を超える寸前―――。

「……なら、忠告を一つ」

 ガタリと音を立てルイズは席を立つ。
 アンリエッタに背中を向けた姿のまま、ルイズは言い放った。

「シロウと一緒にいたいのならば、覚悟を持つことです」

 それだけを言い放ったルイズは、そのまま部屋を出て行く。
 一人取り残されたアンリエッタは、テーブルの上に残された冷え切ったカップを手に取ると、それを一気に飲み干し。

「覚悟は―――持ちました」

 カチャリと音を立てカップを皿の上に置いた。





 必要最低限の家具の姿しかない部屋の中、一人佇む士郎は開けっ放しの窓に近づくと、窓枠に手を置き空を見上げる。空には眩いほどの青が広がっていた。

「……遅かったか」

 窓から吹き込んだ風が、士郎の白い髪を揺らす。吹き寄せる風に目を細めた士郎は、避けるように窓に背を向けると扉に向かって歩き出す。
 淀みのない動きでドアを開け放った士郎だったが、廊下へ身体を出した瞬間突然ピタリとその動きを止めると、主がいない部屋を振り返り、

「それじゃあ、迎えに行くとするか」

 パタンと扉を閉めた。


 

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