第九章 双月の舞踏会
エピローグ
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かけに、同じく初めて船の姿を見るキュルケも呆れたような声を上げる。
「いやしかし、コルベール先生はトリステインの人のはずだが、これだけの船の建造費を、よくゲルマニア貴族のツェルプストー家が出したね」
「家の父親は、こういうところが貪欲だからね。才能があれば出し惜しみはしないわよ。使える人間なら一族に積極的に取り組もうとするし。実際、わたしに届けられた手紙の中に、コルベール先生と結婚しろって言う話も書かれていたしね」
「「ええッ!!?」」
何気なく口にしたキュルケの言葉に、モンモランシーとギーシュが同時に驚愕の声を上げる。
「け、結婚って! もしかして承諾したのあなたっ!?」
「するわけないじゃない」
モンモランシーの問いかけに、キュルケは「何言ってんの?」と首を傾げて見せる。
「わたしにはシロウがいるのよ。まあ、確かに、コルベール先生はいい男だから、もしシロウと出会わなかったらそういう未来もありえたかもしれないわね」
ふっと口元で笑い肩を竦ませたキュルケは、ぐるりと辺りを見渡すと疑問の声を上げた。
「そういえばシロウを見なかった? 朝から見てないのよ」
「え? シロウさん? えっと、見てないわよ」
「そう……」
モンモランシーの答えにキュルケは目を伏せると、風になびく赤い髪を抑える。
「何処……行ったのかしら」
コルベールとオスマン氏が、キュルケとモンモランシーたちが話をしていた頃、ルイズは自分の部屋でアンリエッタと向かい合って椅子に座っていた。
会話の内容は、世間話などではない。昨夜、ルイズを襲った相手について、アンリエッタが直々に聞き込みを行っているのだ。とは言えルイズは舞踏会の会場であるホールを出た時から気を失って何も覚えていないので、説明のしようがないのだが。それでも分かっていることはあった。自分を攫おうとしたのが、あの『ミョズニルトン』と名乗っていた『虚無の使い魔』であったこと等を。
しかし、やはり気を失っていたルイズでは詳しい話は分からず。結局あとから事情をよく知る士郎から直接話を聞かなければならなくなる。
だがそれは最初から分かっていたこと。一通りの聞き込みを終えた今、本当の話し合いが始まることを、ルイズと、そしてアンリエッタも気付いていた。
「ところで話は変わりますが……どうでしたか舞踏会は?」
口火を切ったのはルイズだった。
何気ないように装い、机の上に置かれたティーカップに口を付ける。
「そう……ですね。とても、楽しく過ごせました」
「そうですか、楽しく過ごせましたか」
カチャリと音を立て、ルイズはカップを皿に戻す。
視線はまだカップから離れていない。
「……気持ちは確かめられましたか」
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