第捌話『子猫と雨』
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「ふぁ〜あ……眠い……」
「寝不足ですか?」
俺の横を歩いている澪が尋ねてくる。
「いや。しっかり7時間以上寝たんだけど、この天気のせいで眠気がとれなくて……ふぁ〜あ」
そう、今日の天気は生憎の雨雲。そのせいで朝から薄暗い。こんな天気だと何か気分も晴れないよなぁ。
にゃ〜
ん?今なんか聞こえたような……。
「澪。今、なんか言ったか?」
「いえ、何も。どうしたんですか?」
「いや、今なんか聞こえたような――「にゃ〜」――ほらまた」
「本当ですね……猫の鳴き声…みたいですけど。何処からでしょう…?」
キョロキョロと辺りを見渡す。
「あ、ユウさん。あそこに何かありますよ」
澪の指差す方を見ると段ボールがポツンと置いてあった。
にゃ〜
近くに行くと再び聞こえる鳴き声。間違いなくこの中からだ。
「空けてみますか?」
「そうだな、一応確認だけでもしておくか」
「わかりました、それでは……」
段ボールの蓋の部分を開けた。
「にゃ〜」
中から出てきたのは想像通り猫だった。しかも、子猫。
「ふぁ〜、ユウさん、ユウさん。子猫ですよ子猫。可愛いですねぇ」
甘ったるい声を出しながら(三∀三)←こんな顔をして撫でている。
いつも表情をあまり表に出さない澪だが動物に対してはこうなる。
「あら、猫?」
「あ、真琴さん。おはようございます」
猫を撫でている澪を眺めていると、真琴さんが声を掛けてきた。恐らく、漁の帰りだろう。
「はい、おはよう。どうしたの、その猫」
「どうやら捨て猫みたいで、それを撫でている澪が桃源郷にダイブしている所です」
「そう……可哀想だけど、うちは旦那がアレルギー持ちだし…」
「そうですよね。澪、そろそろ行くぞ遅刻する」
「あ、はい。でも……」
返事はするが撫でるのをやめようとしない澪。まあ、この状況を見て動物好きが放置出来るわけないよな。
その気持ちは分かるが、どうすることも出来ないんだからせめて少しでも未練を残さないようにしてやらないとな。
「ほら、いくぞっ」
「あ……っ」
無理矢理手を引き立たせる。
「それじゃあ、真琴さん。いってきます」
「いってらっしゃい。気を付けて行くのよ」
そのまま、澪の手を引き学園に向かった。
辻堂雄介の純愛ロード
第捌話『子猫と雨』
「おはようございます!」
「「「おはようございます!!!!」」」
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