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剣の丘に花は咲く 
第九章 双月の舞踏会
第九話 伸ばされる手
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「……っ……て……あ……!」
「タバサ、奴らとの関係を聞いてもいいか」
「……あとで……話す」

 士郎は前に座るタバサに声をかける。しかし、タバサは振り返ることなく短く返すだけ。

「……ッ! ……っ……よッ!」
「ああ、わかった」

 士郎はそんなタバサの態度に小さな苦笑を浮かべると、顔を動かし。

「……ッ! ……ッ!?」
「と言うかさっきから五月蝿いぞ」

 シルフィードの胴体に括りつけられたデルフリンガーを殴りつけた。

「……っ! な、何するんでぇい相棒っ!」
「少しは静かにしていろ」

 士郎が殴ったせいか、デルフリンガーを括りつけていた紐が緩み、声が漏れ始めた。

「なっ! せ、折角の感動の再会なのに随分な言いようじゃねえか!」
「だから今は黙っていろ。これ以上しゃべるとこのまま下に放り捨てるぞ」
「なっ! わ、わかったからお、落ち着け相ぼって?! なっ、何なんだよその背中っ!? 氷を背中に突き刺すなんて、何時の間にそんなとんでもなファッションセンスを持つようになったぶッ?!」
「いいから黙れ」

 再度騒ぎ出したデルフリンガーに拳を振り下ろして強制的に黙らせると、黙々とシルフィードの背中に縛り付けていた紐を外した。叩き潰された虫のように、小さくぴくぴくと刀身を震わせるデルフリンガーを、士郎は自分の腰に差す。 

「部屋にデルフがいないから何処いったかと思っていたが、まさか、タバサが持っていたとは」
「……あまり意味はなかった」
「そう言ってやるな。デルフが落ち込むぞ」
 
 同意するように、鞘がガチャりと鳴る。
 どうやらタバサは士郎の戦闘力を下げるため、武器であるデルフリンガーをシルフィードの背に隠していたようだが、あまり意味はなかったと感じているようだ。
 タバサの言葉に、士郎は苦笑いを浮かべる。
 部屋に置いていた筈のデルフリンガーの姿がないことに気付いていたが、まさかタバサが持っていっていたとは、士郎は思いもしなかった……と言うかぶっちゃけ気にしてはいなかったからだ。
 士郎は怒りを示すかのようにカタカタと震えるデルフリンガーを無視し、段々と近づく巨大なガーゴイルの姿に集中する。
 高まる緊張。
 張り詰める空気。
 そんな時、くぅ〜と言う音が士郎の耳に入り込む。

「……あ〜……と、その……タバ―――」
「―――違う」

 士郎の言葉が終える前に、タバサがそれを否定する。士郎の首が、疑問を表すように傾く。

「じゃあ―――」
「―――この子」

 またも士郎の言葉が途中で遮られる。士郎の言葉を遮ったタバサは、手に持った長い杖で前にある自分の使い魔―――シルフィードの頭をどつく。
 
「きゃわんっ?!」
「……きゃわん?」

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