第九章 双月の舞踏会
第九話 伸ばされる手
[2/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、タバサの前に立つことで遮った士郎は、地の底から響くような重い声を響かせる。
「―――無能は引っ込んでろ……とな」
遠慮のない殺気混じりの士郎の声は、ガーゴイルを通してその使い手にまでその脅威を届かせたのか、一瞬ガーゴイルの動きがピタリと止まった。
―――……ふふ、死にかけのあなたがそんなことを言っても強がりにしか聞こえないわよ。ここでわたしが止めを刺してあげましょうか、と言いたいところだけど、あなたは未知数にすぎる。ここはこの子だけで我慢しておきましょう―――
士郎の視線と言葉から逃げるように、ガーゴイルは羽ばたき離れていく。巨大なガーゴイルの羽ばたきは、離れた位置にいた士郎たちにまで感じるほどの強さで動き、どんどんとその巨体を小さくさせていった。
「ちっ、挑発に乗らんか。どうする、一か八かやるしかないか」
どんどんと小さくなっていく影に対し、士郎が不快気に顔を顰める。
氷の矢からタバサを守るため、自分自身を盾としたが、全魔力を振り絞って最大に強化した肉体でも、重力で加速した氷の矢を防ぐことは出来ず、深々と肉に突き刺さってしまい、流れる血でどんどん体力が削られていく。幸いぎりぎり致命傷ではないが、動きはかなり制限されていた。魔力もまた、効率も何も考えず全力を振り絞った結果、宝具は愚か、ただの魔力を帯びた剣でさえ、あと十本投影出来るか出来ないか……。
だが、それでも、追いかける方法が無い自分に出来るのは、宝具を矢とした長距離射撃しか方法しかない。
決意した士郎が、残った魔力を振り絞ろうとした時―――口笛が響いた。
ガーゴイルが飛んでいった方向とは逆の方向から、タバサの使い魔―――シルフィードが飛んできて、士郎たちの前に降り立つ。
「乗って」
ばさりばさりと土煙を舞上げながら降り立つシルフィードに向かって、タバサが駆け寄る。
慣れた様子でシルフィードに跨ったタバサが、顔を振り士郎に乗るよう無言で促す。
「すまない」
礼を言いながら、士郎もシルフィードの背にのぼる。
「追って」
士郎がシルフィードの背に乗ったことをチラリと後ろを見て確認したタバサは、軽く首筋を叩き命令を口にする。
タバサの命令に応えるように、シルフィードは一つ嘶くと、もう豆粒ぐらいの大きさとなったガーゴイル目掛け飛び出した。
ガーゴイルを追い、士郎たちを乗せたシルフィードは雲を抜ける。
雲海を下に、遮るものがない月の光は眩いほどであった。
「やはり、奴はいないか」
「……あ……て……う!」
未だガーゴイルの姿が豆粒ほどの大きさにしか見えないが、士郎の目にはその姿をハッキリと映していた。ガーゴイルの背には、ルイズの桃色の髪しか見えず、他に人影は見えない。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ