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ファイアーエムブレム〜ユグドラル動乱時代に転生〜【外伝】
とある騎士の昔語り---その6---
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った。
 だが不思議なことに、代官は部下が紛失した公金を私費を投じて穴埋めしたという美談すら出来上がっていた……




 司法取引というものでもあったのか、表向きは三者とも咎めを受けることはなかった。
 何が " 事の真偽を詳らかにする " だ、彼はあの判事達を見かけたらくびり殺してやろうとさえ思っていた。
 ………その後、彼は近衛騎士としての任務を全て解かれることになった。







「……納得いきませんよ! なぜオレが辞めねばならんのです!」
「まぁ、落ち着け」
「落ち着いてなんていられませんぜ!」
「きちんと聞け。任務を解くだけだ。 お前から騎士の身分を剥奪するなんてお達しじゃあ無いのだしな」

 近衛騎士団長じきじきに彼への通達が行われていた。

「だいたいがだ、その様子では我々がいかなるものか本当にわかっているのか疑問に思うぞ」
「……国王陛下に対し無私の忠義を捧げ、外敵からお守りし、民の模範となり……」
「あー、そんなのは当たり前だ。 そうじゃ無くてな……」

 近衛騎士団長はそう言うと彼の甲冑の胸甲を軽く叩き、

「お前が選ばれたのはこの甲冑の寸法にぴったりだった。 ただそれだけだ」
「そ、それじゃ……」
「その通り、今のお前を見てみろぉ。 緩くなっていたり、丈が合ってなかったりと酷いものだ」

 一揃いの甲冑というものは当たり前だが値が張り、おいそれと誰でも手が出せるものでは無い。
 それゆえお抱えになる近衛騎士に貸与される。
 また、自前で鎧を持つ者であっても王宮内では貸与される甲冑を身に帯びねばならない決まりとなっていた。
 近衛騎士に限らず集団行動をはたから見る場合、構成員が等しい規格で統一され一糸乱れぬ動きを為しえた時、そこに秩序だった美を感じることはないだろうか。
 王直属の部隊であるというのならそのような儀礼的な美しさもまた求められるのは大きな戦乱から離れたこの時代では辿るべき道筋であった。

「ミレトスという自由都市になじみの者がいる。 元は同僚だったんだがな」
「……それはいったい?」
「紹介状を遣るから奴の元へと赴け、廻国修行ってことにしておく」
「やっぱり厄介払いじゃないですか!」
「違う違う、王都におわし自由に動けぬ我らがあるじの目となり耳となる役割を果たせってな」
「………」
「それと、そこに跪け。 もったいなくも陛下からお言葉をお預かりしている」

 言葉に従い片膝を着いた彼の姿を確認すると国王からのねぎらいの言葉を伝えられ、預かっていた指輪(エリートリング)を授けられた。
 これは書状を封蝋する際に象嵌部分を用い、同じような任務に就いている者のうち誰からの物であるかを判別するためのものだと知らされた。




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