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ファイアーエムブレム〜ユグドラル動乱時代に転生〜【外伝】
とある騎士の昔語り---その6---
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た不遜な態度の彼にその場は沸き、彼付きの弁護人は顔色を失った。
  " 静粛に! " と繰り返す裁判長だが一向に治まらぬことに業を煮やしたのか、木槌(ガベル)で机を何度も叩き付け、力ずくでその場の静寂を作り出した。

「畏れ多くも国王陛下の御意を持ち出すのであれば、貴公に関わる事案の審理も又、これ全て陛下からの信任のもと我らに一任されたものである。 ……許可なくこれ以上の発言を認めぬ」








「……全く、なんてことをしでかしてくれたのかね。 あれほど余計なことは言うなと念を押したというに」
「余計なことなんざ何一つ言っちゃぁいませんがね」

 その日の審理の後、弁護人に連れられたヴォルツは久方ぶりに王都の歓楽街に在った。
 入念な打ち合わせをしたいのなら半年余りもの間、いくらでもそんな時間はあったというのに。
 弁護人は誰かに代わってもらえるのならすぐにでも替ってもらいたい心持であった。
 なにしろ、法廷闘争で決闘を以て決着をつけろなどというのは近年稀なことであったからだ。
 ……破る者ばかりであるが決闘は禁じられている。
 ただ、それは私闘としてのものであり、決闘裁判自体はいまだ合法であったのだ。
 もっとも、相手側が受諾しなければ成立しえないので起こることは無さそうであったが……




 その後の裁判と審理では出廷と発言の機会を求めるヴォルツの要望は叶えられることは無く、彼にとって情勢は芳しくはなかった。
 だが、最後にどうにか得られた発言の機会に彼はぐっと怒りを抑えて、新たな証拠として扱ってほしいと衣服の内側に縫い込んできた書状と言うよりは幾つかの皮の切れ端を提出した。
 ……(はかりごと)にかけられているのではと疑いを感じてからの彼は、役場の書記に慎重に近づいた。
 代官の命により帳簿の改竄を日頃から命じられていた書記官は、発覚することをとにかく恐れる小心な者であった。
 かと言って代官に逆らうことも恐ろしく……そこで二重に帳簿をつけていた。
 代官を通じて本国へ送られる物、そして、正規であるべき物と。
 書記官とヴォルツが連署し血判を押したソレ、つまり不正は代官によって行われているという新たな告発、そして帳簿を書き写したほんの一部は新たな証拠品として受理されたが、裁判長を含めた判事達は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。
 

  
 

 それから三月ほどの後、王都へと召喚された書記官と代官、それに彼も含めて審理のやりなおしが行われた。
 ……ヴォルツと書記官が共謀して自分を陥れようとしているという代官の主張は資金力による根回しによって優勢であった。
 しかしながら横領された公金の行先というものがヴォルツや書記官の周りから出て来ないという不都合もあ
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