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ファイアーエムブレム〜ユグドラル動乱時代に転生〜【外伝】
とある騎士の昔語り---その6---
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た顔と多くの知らぬ者の顔があり、正面には一際高い段が据えられそこには判事らしき者達が(いか)めしい顔で彼を見下ろしていた。

 審問の内容は公金横領の疑い、また、近衛騎士としての資格争訟についてのものだった。
 身に覚えのない内容に幾度も反論しようとした彼であったが、その度に叱責を浴びせられた。
 この半年、彼の(あずか)り知らぬ間に捜査や審理は行われており、この日は認否だけと思われた。
 訴訟は既に彼一身のことにとどまらず近衛騎士団の面子がかかったものとなっていたのであろう。
 
                                                                                             ……真相としては代官が行っていた横領をヴォルツになすりつけるためのものだった。
 横領した公金のうち、ブリエンヌ伯爵にもそれは流れており、アウネ村を襲ったという山賊についても実は伯爵が用意した者達であり、口封じに皆殺しにされていたりもする。
 代官と伯爵は共犯であるかに見えるが、実は伯爵は開拓村を横取りするつもりであり、鹿追い祭りで勢子が入り込んだというのも敵情視察に他ならなかった。
 その際、偶然出くわした巨熊を仕留めようとしたがし損ない、取り逃したのが開拓村近郊へと出没したのだろう。
 手負いとなり凶暴化していたのはそういう事情だったのだ。





「……自分は訴えの件、全て身に覚えは無い。 また、本分は騎士ゆえ、かような恥辱を受けたからには『決闘(フェーデ)』によって疑いを晴らし、名誉を取り戻す機会をいただきたい」

 日を改め幾度かの召喚と審理の後、遂に彼にも許された発言に、隣席していた者達はざわざわと色めき立ち、騎士団側から彼に就けられていた弁護人は裁判長に発言の許可を求めたが得られなかった。
 裁判長は他の判事と小声でしばらく協議し " 静粛に " と、呼びかけてから

「決闘については却下とする。 一つは、騎士としての身分争訟が本件の事案の一つである以上、ヴォルツ卿の身分が決闘の結果失われた場合、そもそも決闘を行う権利を持たぬ者が決闘を行ったという不法行為を担保することが出来ないからである。 いま一つは事の真偽を(つまび)らかにするために本件の審理が行われている以上、単に勝者が主張を確定せしむる決闘による決着は本件の性質上そぐわない」
「……意味がよくわからねぇが、自分は国王陛下から叙任された身。 そして、陛下によって任を解かれてもいない訳なんでね、騎士としての権利を行使することに妨げを受ける(いわ)れは無いはず。 よって! 改めて! 『決闘(フェーデ)』を申し込む!!!」

 裁判長に手袋を投げつけ、指さして睨み付け
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