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ニュルンベルグのマイスタージンガー
第二幕その十八
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第二幕その十八

「その点で貴方は非常にいい記録係です」
「マイスタージンガーの歌は絶対なのですぞ」
 胸を張ってそのうえで気取った仕草で述べるのだった。
「何があろうとも」
「ですからです。貴方の歌を聴いて記録します」
 真意はここでも隠している。
「それで宜しいですね」
「やっとその気になって頂けましたな」
 ザックスが引き受けてくれたと見てほっとした笑顔を見せるのだった。
「全く。ごねるのもあまりよくはありませんぞ」
「ただしです」
 しかしここでまたザックスは言うのだった。
「靴ですが」
「それはどうされるおつもりですか?」
「記録はこれを作りながらということで」
「靴で!?」
「そうです。靴底を叩いてそれを記録としましょう」
「何が何だか」
 ベックメッサーはまたザックスの言っていることがわからなくなった。彼が何を考えているのかもまたわからなくなってきたのだった。
「わからないのですが」
「さあ、はじめますか」
 リュートを抱くようにして腕を組んでザックスの考えが何なのか思案しているベックメッサーを急かしてきたのだった。
「いよいよ」
「ですがです」
 ザックスの考えがわからないまま彼は言うのだった。
「ちゃんと御願いしますよ」
「ええ、靴屋の知っている規則に従い」
「そう、マイスタージンガーの名誉にかけてです」
「靴屋の勇気を以って」
「そうです。それに誓って」
 二人はここでは真面目になっていた。
「やりましょう」
「是非。それでは」
 早速ベックメッサーにまた声をかけるザックスだった。
「やりましょう。ただ」
「ただ?」
「貴方がミスを犯さないと靴ができませんが」
「そこはちゃんと機転を利かせて下さい」
 今はこう言うベックメッサーだった。何はともあれそのうえで歌いはじめる。ヴァルターは今の彼等のやり取りを見て首を捻るばかりだった。
「何をやっているんだ?」
「では」
「あれ、そちらでですか」
 ザックスは窓の下に立つベックメッサーを見てまた言ってきた。
「御側ではないのですか?私の」
「私はここでいいのです」
 ベックメッサーは少し意固地になって彼に言い返す。
「それに記録席が見えないのと同じにしたいですから。これなら見えません」
「相変わらず律儀な方だ」
「伊達に町の書記をやってはおりません」
 またむっとして言い返すのだった。
「とにかくです。はじめます」
「何なのかしら、今の流れは」
「さて」
 エヴァもヴァルターも何が何なのかさっぱりわからないのだった。
「どうなっていくのかしら」
「それは私にも」
「それではです」
 そしてザックスがまた言う。
「はじめ」
「はい」
 ベックメッサーは歌いはじめる。しかし
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