第三十八話 狐道その八
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「森の中にな」
「だから、なの?」
「それで小さいの?」
「森の中は木が生い茂っていて大きいとかえって隠れにくいし動きにくいのじゃ」
「だから小さいのね日本の動物って」
「それでなの」
「熊さん達もじゃ」
ツキノワグマである、やはり熊の中では小型であり他の種類の熊に比べると人を襲ったという話もかなり少ない。
「小さいのじゃ」
「小さいのは私だけじゃなかったのね」
「いや、あんたの背だと江戸時代だと男並じゃぞ」
狐は自分が小柄だと言った愛実にすぐに返した。
「充分にな」
「そういえば江戸時代の人って小さかったのよね」
「戦国時代もそれ程大きくなかった」
「それは栄養の関係よね」
「動物性タンパク質が少なかったからな」
それで小さかったのだ、尚このことは日本だけではない。
欧州でもどの国でもだ、例えば古代ローマの鎧を見れば体格が随分と小さい。またナポレオンは身長一六四だったがこれは当時のフランス人、平民階級の平均だった一六〇よりも若干高い。全て栄養の関係だ。
「そうなったのじゃよ」
「そうよね、やっぱり」
「だからあんた江戸時代だと大きい方だぞ」
「女の子の間ではなのね」
「男並じゃ」
そこまで大きいというのだ。
「確か慶喜さんと同じ位じゃ」
「慶喜って徳川慶喜よね」
徳川幕府最後の将軍だ、その後半生はかなり長かった。
「そうよね」
「うむ、あの人は今から見ると随分小さい」
「そうだったの」
「伊達政宗さんで一六〇だったのじゃ」
「独眼龍もそれ位だったの」
「左様、かつてはそうだったのじゃ」
栄養の関係だ、全ては。
「肉や牛乳じゃな、やはり」
「そういえば鹿児島では昔から豚肉を食べていたから」
ここで聖花が言って来た、鹿児島の話をしたのだ。
「西郷さんや大久保さんは大きかったのよね」
「そうじゃ、二人共一七五を超えておった」
「その頃の日本人だとかなりの大きさよね」
「jほぼ巨人じゃな」
そこまで大きかったというのだ、二人共。
「まあとにかく昔と今では人の大きさも違うのじゃよ」
「ううん、私ずっと小さいこと気にしてるから」
一五五の聖花がまた言う。
「そこは昔だったらよかったかも」
「けれど愛実ちゃん、江戸時代はトンカツないわよ」
「あっ、そうよね」
「あと白菜とかもないから」
「じゃあ定食出来ないわね」
「ハンバーグもないから」
愛実は最近こちらも得意になってきている、定食の料理全体の腕をこれまで以上にあげてきているのである。
「エビフライもね」
「ううん、じゃあ別にいいかしら」
「パンもないから」
聖花は自分の店の商品も話に出した。
「だからね」
「私達江戸時代では生きていけないわね」
「せめて明治維新からね」
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